[本文]

国・地域名:
フランス
元記事の言語:
フランス語
公開機関:
首相官邸
元記事公開日:
2022/02/04
抄訳記事公開日:
2022/04/19

「フランス2030」工業部門を発表 脱炭素の投資に56億ユーロ超

FRANCE 2030 Décarbonation de l’industrie

本文:

2022年2月4日付、首相官邸の標記発表文書の概要は以下のとおり。

フランス首相府は、「フランス2030」計画のうち、工業部門の脱炭素化の内容を発表した。2030年までに、製造現場の脱炭素化に50億ユーロ、脱炭素化に向けたイノベーションに6億ユーロ以上投資することなどが盛り込まれている。
「フランス2030」計画は、マクロン大統領が2021年10月に発表した国の長期的な投資計画で、今回の「工業部門の脱炭素化」のほか、「小型の原子炉の導入」「グリーン水素のリーダーを目指す」など10項目が盛り込まれている。
エコロジー移行省のバルバラ・ポンピリ大臣は「脱炭素化は、単に必要なだけでなく、企業の競争力を左右する問題でもある」と指摘するとともに、約10%の排出削減に成功した大手鉄鋼会社を例に挙げ、「こうした取り組みが全産業で必要だ。気候変動対策の目標達成という観点でも欠かせない」と話している。

(※以下は参考情報)

■ 産業セクターによる脱炭素ロードマップ

製造業や建設業から排出される二酸化炭素の72%は、金属、化学、セメント、石灰、ガラスなどから発生している。セクター戦略委員会(CSF)に集められた関係セクターの代表者は、国の支援を受けて、セクター別の脱炭素ロードマップを作成。2015~30年の間に、化学セクターで26%、セメントセクターで24%、鉄鋼業界全体で31%、アルミニウム業界では9%、それぞれ排出量を削減すると掲げた。

■ 「フランス復興計画」による支援

首相府がすでに発表している「フランス復興計画」の一環として、製造業の脱炭素化を支援する措置が導入された。特に、バイオマス熱の生産支援に特化したプロジェクト公募や、エネルギー効率とプロセスの脱炭素化向上に特化したプロジェクト公募で141件が採択され、すでに以下の支援が可能になっている。
・政府の支援額:7億5,800万ユーロ
・産業投資額:20億ユーロ
・CO2換算で年280万トンの排出回避

[新規の措置と行程による強化策]

■ 「フランス 2030」計画

「フランス 2030」計画では、産業界の脱炭素化と気候変動への取り組みに56億ユーロ投資。さらに脱炭素水素の主導と最先端の再生可能エネルギー技術開発に23億ユーロ、フランス国内での小型原子炉開発に10億ユーロ、
電気自動車や低炭素航空機といった「未来の輸送手段」に38億ユーロ、などとなっている。

※「フランス 2030」計画について
・技術イノベーションと工業化を通じて、経済の主要セクター(エネルギー、水素、自動車、航空、宇宙)を持続的に変革する。基礎研究からアイデアの発現、新製品・サービスの生産に至るまで、「フランス2030」は、イノベーションから工業化までのライフサイクル全体を支援する。「フランス2030」は、支出の50%を経済の脱炭素化に充て、50%を(環境に不利な支出をすることなくイノベーションを推進している)新興企業に充てるという2つの分野横断的な目標を定めている。
・企業、大学、研究機関が上記戦略的セクターにおける移行を完全に成功させるべく、総額で500億ユーロ強が投資される。
・その戦略的方針を決定するに当たり、経済界、学術界、現地、欧州のプレーヤーと協議して考察し、集団的に実施される。

■ 脱炭素化に向けた多国間および国レベルの取り組み

気候変動対策としてのフランスのロードマップである国家低炭素戦略(SNBC)は、2050年にカーボン・ニュートラルを達成するべく、経済の各セクターの温室効果ガス排出削減に向けた針路を定めている。特に産業界にとって、これは、2015年と比較して2030年までに35%、2050年までに81%の温室効果ガス排出量削減という目標になる。

これらの温室効果ガス排出削減目標は国際的な枠組み(パリ協定 : COP21)の一部でもある。

また欧州理事会は、2019年12月に、2050年までのEUの気候ニュートラル目標を採択し、2020年12月には、EUにおける温室効果ガス排出量を1990年レベルと比較して2030年までに少なくとも55%削減するという拘束力のある目標を承認した。

■ 目標達成に向けた欧州の枠組みと改革

2005年以降、排出権取引システム(ETS)がある。これにより、エネルギー、製造業、域内航空セクターの固定設備からの排出量に炭素価格を設定することが可能である。これは、EUの温室効果ガス排出量の約38%をカバーする。

欧州委員会(EC)が2021年7月14日発表した「Fit for 55」パッケージは、特に上記 ETS を改訂して、排出量削減目標を新たな欧州気候目標に合わせ、温室効果ガス排出量を削減するインセンティブの強化を計画している。このパッケージには、国境における炭素調整メカニズム(MACF)を導入する規制案も含まれる。このメカニズムにより、炭素の漏洩を回避することで、脱炭素化を調整し、関係するセクターの競争力を維持することが可能になる。

この枠組みのインセンティブ特性を深化させるべく、炭素の最低価格設定が、フランスが欧州での交渉文脈で求める追加のステップになる。

炭素の価格と同様に、競争の激しい条件下での炭素を含まないエネルギーへのアクセスは、生態系の移行を加速する上で重要な成功要因である。

[DW編集局+JSTパリ事務所]