[本文]

国・地域名:
EU
元記事の言語:
英語
公開機関:
欧州委員会(EC)
元記事公開日:
2022/02/15
抄訳記事公開日:
2022/04/26

EC、戦略的依存関係に対処する重要施策を発表 欧州防衛に貢献、イノベーションを促進

Commission unveils significant actions to contribute to European Defence, boost innovation and address strategic dependencies

本文:

2022年2月15日付、欧州委員会(EC)の標記発表の概要は以下のとおり。

欧州委員会(EC)はこのほど、EU内の防衛・安全保障にとって重要な分野で、欧州委員会主導のイニシアティブをいくつか提唱している。これらは、欧州防衛への貢献を含むもので、陸、海、空の従来の防衛産業や装備から、サイバー、ハイブリッド、宇宙の脅威、軍事的機動性、気候変動の関連性まで、あらゆる範囲の課題のほか、安全保障・防衛のための重要技術に関するロードマップをカバーしている。これら新規イニシアティブは、特にEU内の協力を強化し、それによって規模を拡大し、コストを抑え、運用効率を高めることにより、より統合された競争力のある欧州防衛市場に向けた具体的なステップである。今回の発表により、欧州委員会は、安全保障・防衛に関するEUの戦略的指針の準備段階で意見を述べている。

欧州委員会は、進化し続ける地政学的および技術的文脈で利用可能なすべての手段を使用することにより、急速に変化する多層的な脅威に対抗するEUの能力強化を目指す。

欧州委員会は、特に、欧州防衛市場の競争力をさらに強化するために、次のような主要新規領域を特定した。

▽EUの協力枠組みで開発・調達される主要な戦略的能力および重要な成功要因への加盟国の投資をさらに促進する方法を探る。
▽EU内で共同開発される防衛能力の共同調達をさらに奨励する。
▽加盟国に対し、特にEUの協力枠組みで開発された防衛能力に関して、合理的かつより収束的な武器輸出管理慣行に向けて引き続き移行するよう要請する。

■防衛研究・防衛能力への投資および共同調達

欧州防衛基金(EDF)は、2022年末までに、防衛研究・防衛能力開発プロジェクトに19億ユーロを投資する予定である。これにより、防衛イノベーションを刺激しながら、主要な大規模共同能力開発プロジェクトが開始される。欧州委員会はまた、特にEUの協力枠組みの中で開発・調達される場合に、防衛戦略能力への加盟国の投資を刺激するべくさらなるインセンティブを展開する。欧州委員会は特に、付加価値税(VAT)免除の提案、新たなファンディング・ソリューションの設定、(関連する防衛技術の共同開発に加えて)機器の共同調達、保守、運用への取り組みを支持するEDFボーナスメカニズムの検討など、EU内で共同開発された防衛能力の共同調達を奨励するべく、多くの手段を検討する。欧州委員会は、通常欧州秋季財政報告と併せて発行される年次単一市場報告書に、多国籍防衛能力プロジェクトに関連する開発、障壁、機会に関する所見を述べる章を設ける。

■合理的かつより収束的な輸出管理慣行

各加盟国は軍事機器の輸出許可の発行を担当しているが、欧州委員会は、特にEUの枠組で共同開発されている防衛能力について、武器の輸出管理慣行を合理化し、徐々に収束に向けた継続的な作業を進めるように各加盟国に呼びかけている。欧州委員会は、加盟国に対し、原則として、共同開発された軍事機器・技術を第三国に輸出することを互いに制限しないアプローチを模索するよう要請する。この作業により、EDFが資金支援する製品が、加盟国の主権的決定を損なうことなく、国際市場への適切かつ競争力のあるアクセスから利益を得ることが保証される。

■民事および防衛研究・イノベーション間の相乗効果と戦略的依存の削減

安全保障・防衛のための重要技術に関するロードマップでは、EUの安全保障・防衛セクターの競争力とレジリエンスを強化するための道筋を概説している。

▽現在設立されようとしている重要技術の「観測機関」に積極的に参画するよう加盟国に要請する。
▽EUレベルで(軍民の)デュアルユースの研究・イノベーションを奨励する。
▽戦略的指針の文脈で重要技術へのEU全体での統括的アプローチを展開するよう加盟国に要請する。
▽多数の新規ツール(インキュベータ、投資ブレンド施設など)を通じて、安全保障・防衛のイノベーションと起業を支援する。
▽欧州防衛機構との協力により、各々の取り組みを1つの傘下に収めるべく、EU防衛イノベーション制度を創設する。
▽戦略的依存を減らすべく、既存または新規のEU産業・貿易手段を実装および評価する際に、必要に応じて、安全保障・防御の考慮事項をより体系的に評価する。

重要技術とバリューチェーンで特定される依存関係を減らすことは、ロードマップのもう1つの重要な側面である。この観点から、欧州委員会は、主要なEUの産業・技術イニシアチブ(アライアンス、標準など)に防衛の考慮事項を組み込み、重要インフラ(特にデジタル領域)を調達する際にEUの安全保障・防衛の利益を保護し、外国直接投資のスクリーニングを強化することを提案する。

■EUレベルでの宇宙の防衛範囲の強化

欧州委員会はまた、特に追加の宇宙監視・追跡(SST)サービスを通じて、またEU産業の可能性を最大限に活用することにより、EU宇宙資産の保護をさらに強化する方法を模索する。防衛分野を含む政府のニーズに対応する新たな回復力のあるサービスの提供を目的として、EUの宇宙インフラの「設計による(軍・民)デュアルユース」アプローチを促進する。

欧州委員会と上級代表はまた、宇宙で発生する攻撃や宇宙ベースの資産への脅威に際し、連帯、相互支援、危機対応メカニズムの活性化の可能性を探求する。

■欧州のレジリエンスの強化

欧州委員会はまた、欧州のレジリエンスのための主要な実現イニシアチブを完全実施する。特に、ハイブリッド脅威に対抗するべく、欧州委員会は、上級代表および加盟国と協力して、セクターのレジリエンスベースラインを評価し、ギャップとニーズ、それらに対処するための手順を特定する。戦略的指針の採択に続いて、欧州委員会は将来のEUハイブリッド・ツールボックスを資金支援し、関連する政策領域専門家の特定を検討する。

さらに、サイバーセキュリティとサイバー防御を強化するべく、欧州委員会はサイバー・レジリエンス法を提案し、欧州標準化委員会にサイバーセキュリティとプライバシーに関する調和のとれた標準を開発するよう要請する。加盟国と協力して、大規模なサイバー事故への備えを強化する。今年末までに、欧州委員会は、上級代表とともに、欧州内外の軍事的機動性を強化するために、共同行動計画の更新を提案する予定である。また、欧州委員会は今年も、防衛に関連する気候変動の課題に対処するべく、さまざまな施策を実施する予定である。

[DW編集局]