[本文]

国・地域名:
EU
元記事の言語:
英語
公開機関:
EU理事会
元記事公開日:
2022/03/21
抄訳記事公開日:
2022/05/09

今後10年間のEUの安全保障・防衛を強化するための戦略的コンパス

A Strategic Compass for a stronger EU security and defence in the next decade

本文:

(2022年3月21日付、EU理事会の標記発表の概要は以下のとおり)

欧州での戦争の再来を目の当たりにした今、理事会は「戦略的コンパス」を正式に承認した。

本コンパスは、2030年までに欧州連合(EU)の安全保障・防衛政策を強化するための野心的な行動計画をEUにもたらす。

より敵対的な安全保障環境では、飛躍的な進歩を遂げ、行動する能力と意欲を高め、レジリエンスを強化するために、防衛能力にますます投資する必要がある。

EUの強みは、団結、連帯、決意にある。戦略的コンパスの目的は、EUをより強力でより有能な安全保障のプロバイダにすることである。EUは、市民を保護し、国際的な平和と安全保障に貢献できる必要がある。これは、ウクライナに対する不当で理不尽なロシアの侵略と主要な地政学的変化によって、戦争が欧州に再来した今さらに重要である。この戦略的コンパスは、EUの戦略的自律性のほか、パートナーとの協力によりその価値と利益を保護する能力を強化する。

安全保障・防衛においてより強力でより有能なEUは、世界的および大西洋横断的安全保障に積極的に貢献し、NATOを補完する。NATOは、そのメンバーの集団的防衛の基盤であり続ける。また、国連を中核として、グローバルなルールに基づく秩序への支援を強化する。

戦略的コンパスは、EUが活動している戦略的環境と、EUが直面している脅威と課題についての共通の評価を示すものである。本文書は、危機において断固として行動するEUの能力を向上させ、その安全と市民を守るべく、実施に向けた非常に正確なスケジュールと併せて、具体的かつ実行可能な提案を行っている。

本コンパスは、安全保障・防衛政策のすべての側面をカバーし、行動、投資、パートナー、安全確保の4つの柱を中心に構成されている。

■行動

危機が発生したときはいつでも、可能であればパートナーと、必要に応じて単独で、迅速かつ確実に行動できるようにするべく、EUは次のことを実行する。
・ さまざまな種類の危機に対して最大5,000人の部隊の強力なEU迅速展開能力を確立する
・ 複雑な環境下も含め、30日以内に200人の完全装備のCSDP(共通安全保障・防衛政策)ミッション・エキスパートの配備に備える
・ 陸上および海上で定期的な軍事演習を実施する
・ 軍事的機動性を高める
・ 迅速かつ柔軟な意思決定プロセスを促進し、より強固な方法で行動し、より大きな財政的連帯を確保することにより、EUの民間および軍のCSDPの任務と運用を強化する
・ パートナーを支援するべく「欧州平和ファシリティ」を最大限に活用する

■安全確保

現在および急速に出現する脅威と課題に対して予測、抑止、対処する能力を強化し、EUの安全保障上の利益を保護するべく、EUは次のことを実行する。
・ インテリジェンス分析能力を高める
・ 広範囲のハイブリッド脅威を検出して対処するべく、多様な手段を組み合わせて、ハイブリッド・ツールボックスを開発し、対処チームを展開する
・ サイバー外交ツールボックスをさらに発展させ、サイバー攻撃への準備と対処を強化するべく、EUサイバー防衛政策を策定する
・ 外国情報操作・干渉ツールボックスを開発する
・ 安全保障・防衛のためのEU宇宙戦略を策定する
・ 海事安全保障当事者としてのEUの役割を強化する

■投資

重要な軍事・民事の能力ギャップを減らし、欧州防衛技術・産業基盤を強化するというEUの集合的な目標に一致するように、加盟国は防衛費を大幅に強化することを約束した。EUは次のことを実行する。
・ 我々の安全保障ニーズに合うように、増強・改善された国防費に関する核国国家目標を交換する
・ 加盟国が共同能力開発に取り組み、陸、海、空、サイバー領域、宇宙空間で活動するための戦略的実現手段と次世代能力に共同で投資するべく、さらなるインセンティブを提供する
・ 防衛技術イノベーションを後押しして戦略的ギャップを埋め、技術的・産業的依存を減らす

■パートナー

共通の脅威と課題に対処するべく、EUは次のことを実行する。
・ NATO、国連などの戦略的パートナー、およびOSCE、AU、ASEANなどの地域パートナーとの協力を強化する
・ 米国、カナダ、ノルウェー、英国、日本など、志を同じくする国や戦略的パートナーとのより調整された二国間パートナーシップを発展させる
・ 対話と協力の強化、CSDPのミッションと運用への参加促進、能力開発の支援などを通じて、西バルカン半島、東部と南部の近隣諸国、アフリカ、アジア、ラテンアメリカでそれぞれに適合したパートナーシップを発展させる

[DW編集局]