[本文]

国・地域名:
英国
元記事の言語:
英語
公開機関:
英国研究・イノベーション機構(UKRI)
元記事公開日:
2022/02/17
抄訳記事公開日:
2022/05/10

物理学の方法を活用して生命科学の壮大な課題に取り組む9つの多分野プロジェクト

Using physics to transform our understanding of life

本文:

(2022年2月17日付、英国研究・イノベーション機構(UKRI)の標記発表の概要は以下のとおり)

我々の脳はどのように情報を処理し、複雑なタスクを学習することができるのか。身体発達の際、組織と胚はどのように形成されるのか。単細胞藻類はどのようにして地球の二酸化炭素排出量の30%を捕捉できるのか。

これらは、9つの多分野プロジェクトが回答することを狙っている質問であり、生命科学と物理学の革新的なアプローチを結集させることにより、生命の解明に変革をもたらそうとするものである。

新しい知識を生み出すだけでなく、幅広い応用が可能になる。新たな炭素回収方法の開発から、先天性心疾患やアルツハイマー病にわたる広範囲の健康状態の治療にまで及ぶ。

■物理学の活用

上記プロジェクトは、「生命の物理学戦略的優先課題基金」を通じて UKRI と ウェルカム・トラスト(Wellcome) から1,800万ポンドのファンディングを受ける。物理学の方法を活用して生命科学の壮大な課題に取り組むユニークなアプローチである。

■胚の形成

これは、人体が形成される過程で、何千もの細胞がどのように自己組織化して胚を形成するかを明らかにすることを目的としている。これにより、①心臓障害、②結合双生児、③脊索腫(脊椎の内側に見られる組織の成長の遅い癌)など、さまざまな先天性疾患を予防・治療する能力が向上する可能性がある。

■炭素回収

ヨーク大学の研究者らは、ピレノイドと呼ばれる微細な「液滴」を含む単細胞藻類が、「ターボチャージャ」光合成によってどのように炭素を捕捉できるかを探究する。

この方法により、地球の二酸化炭素排出量の約30%を捕捉すると推定されている。それらがどのように行われるかを理解することは、炭素を人工的に捕獲する新しい方法や、より多くの二酸化炭素(CO2)を固定するために植物の光合成を促進する方法につながる可能性がある。

■脳の「雪崩現象」

インペリアル・カレッジ・ロンドンのチームは、脳が臨界点に達したとき自己組織化的に機能するかどうか解明することを目指している。これは積雪が雪崩を引き起こす機序に類似している。

これは、アルツハイマー病などの神経障害がどのように認知機能の低下を引き起こすかについての新しい洞察につながり、将来の治療法の開発に役立つ可能性がある。

[DW編集局]