[本文]

国・地域名:
フランス
元記事の言語:
フランス語
公開機関:
首相官邸
元記事公開日:
2022/03/17
抄訳記事公開日:
2022/05/18

政府、「経済・社会の回復」計画を発表 物資、エネルギー、食糧供給の自立目指す <2>

Plan de résilience économique et sociale : France 2030 mobilisé pour sécuriser l'approvisionnement en intrants critiques, renforcer la souveraineté énergétique et renforcer la souveraineté alimentaire de l’Europe

本文:

(第1回からつづく)


【第2回】エネルギー面の自立性の強化


エネルギーに関しては、5か年計画「フランス2030」の開始以来、政府は化石燃料(石炭、石油、ガス)の消費を削減し、エネルギーの独立性を強化するために多額の投資を行ってきた。毎年300億ユーロ以上がフランス経済のグリーン化(低炭素化)に投資されており、それにコロナ禍の経済対策「フランス・ルランス」(復興計画)と「2030」の一環として450億ユーロ以上が追加されている。

しかし、原子力と再生可能エネルギーの利用によって電力の大部分が炭素を含まない場合でも、フランスのエネルギー消費量の3分の2は依然として化石燃料を起源とする。フランスは、移動に必要な石油を大量に消費し続け、暖房にガスを消費し続けている。欧州全体でみると、ガスのほぼ40%がロシアから輸入され(フランスは20〜30%)、欧州の石油の30%がロシアから輸入されている(同10〜20%)。

フランスの「低炭素戦略」では、2050年までに化石燃料の消費を停止することを優先目標としている。2030年までに温室効果ガス排出量の55%を削減するという欧州の目標を達成するための投資の強化は、次の5か年計画の開始時に決定される。

マクロン大統領が東部ベルフォールで提示した戦略に沿い、今回の「回復計画」は、ガス供給源を多様化し、消費を削減し、供給の安全性を高めるための追加施策を迅速に始めることを目的としている。これには次のような施策がある。

▽今年(2022年)の冬までに貯蔵施設の充足を確保し、液化天然ガス(LNG)の輸入能力を強化する。それにより冬をにらんだガス供給を確保する。この短期的な問題に特化した特命チームが設置され、エネルギー・セクターの主要プレーヤーが一堂に会する。
▽発電に使用するガスを少なくするために、バイオメタンの生産と低炭素電力の生産を増やすことによって、低炭素エネルギーの発展を図る。再生可能エネルギーの展開が簡素化され、加速される。
▽電気自動車への移行の急速なペースを維持しつつも、石油供給は確保する。
▽住宅のエネルギー改修支援の効率を改善し、ガスボイラーをヒートポンプ(ハイブリッドを含む)かバイオマス・ボイラーに交換することを低所得世帯にさらに奨励し、ガス消費量とエネルギー消費量を迅速に削減する。さらに4月15日から年末まで、ガスや燃料油の使用せずにすむクリーン暖房システムの設置を補助する制度「MaPrimeRénov」として1,000ユーロ増額する。暖房基金(1億5,000万ユーロ)で暖房ネットワークの脱炭素化を加速する。省エネと暖房改修を目的とした大規模な広報キャンペーンも次の冬以前に始める。
▽製造業では、「2030」による脱炭素化が目標を持って実施される。同時に「ルランス」の採択対象となるエネルギー革新・脱炭素化のプロジェクトを加速度的に進める、あらゆる手段を動員する。これらのプロジェクトが完了すると、例えば製造業ではガス消費量が7%削減され、政府の建物でのエネルギー消費量が5%削減される。
▽エネルギー、とりわけガスの消費を管理するため、地方自治体、公営住宅、家庭などのすべてのプレーヤーを動員することに加えて、特に国が政府庁舎で暖房温度1℃下げるといったモデルを示すこともあわせて、消費の削減計画を開始する。また国は年末までに、建物ストックと事業者のエネルギー消費、特にガス消費を削減するために、迅速な省エネ事業に5,000万ユーロを投資する。

これらの施策により、欧州は遅くとも2027年までに、ロシア産のガスや石油への依存を完全に排除できるはずである。これらの措置は今後数週間かけて調整され、詳細を発表する。

「ルランス」(復興計画)は、工業の脱炭素化12億ユーロを充てた。プロジェクトは進行中だが、2019年から工業部門のガス消費量を7%削減し、ガスの年間排出量を4%以上削減できる予定である。これらのプロジェクトの実現を加速するために、あらゆる手段を活用する。

2021年10月にマクロン大統領によって立ち上げられた「フランス2030」は、総額500億ユーロ以上を動員して、技術革新と工業化を通じた経済の主要セクターの持続的変革を目指している。

工業の脱炭素化は「フランス2030」の重要な課題である。56億ユーロがこの目標に直接割り当てられている。エネルギー原料が逼迫するという特殊な状況に際して、「2030」の最初の「脱炭素化」施策を加速する。

▽産業界のエネルギー移行プロジェクトを支援するために、4月の初めまでに新規プロジェクト公募(AAP)を開始し、欧州のロシア産ガスへの依存脱却に役立たせる。これは今年の冬に実施できる。1億5,000万ユーロの予算枠がこのAAPに充てられる。
▽このエネルギー転換のために、フランスで製造されたバイオマス・ボイラー、ヒートポン(PAC)の展開には特に留意する。「2030」は、特にこの機器の建設を専門とする工業部門の中小企業向けの脱炭素化に6億1,000万ユーロを充てている。


(第3回につづく)

[DW編集局]