[本文]

国・地域名:
フランス
元記事の言語:
フランス語
公開機関:
キャリテ・ド・ラ・シアンス・フランセーズ
元記事公開日:
2022/05/05
抄訳記事公開日:
2022/06/13

QSF、大学の現状について大統領に「提言」書簡を送る <1>

Lettre au Président de la République sur l’état de l’université

本文:

4月のフランス大統領選で現職のマクロン氏が再選されたことを受け、フランスの高等教育や研究機関の競争力向上を目指す独立組織「キャリテ・ド・ラ・シアンス・フランセーズ」(QSF)は、マクロン氏に公開書簡を送った。書簡には「各機関への資金支援」「大学における雇用」「各機関のガバナンス」「学問の自由」といった重要項目の提言が連なっており、同機関のHPでも公開されている。

デイリーウォッチャー編集局は、この書簡の概要を2回に分けて紹介する。1回目は次の通り。

QSFは、4月24日の大統領選挙におけるマクロン大統領の再選を喜ばしく思い、今後5年間の任期に心から敬意を表する。

■各機関への資金支援について

政府の補助金やその他の資金源を維持することに加えて、恵まれない階層の学生を免除対象とし、親の家計収入にリンクした累進的な登録料の導入を受け入れる必要がある。4段階の累進率による登録料(500、1,000、1,500、2,000€)が考えられるが、これは、課税世帯の課税対象所得から控除できる可能性がある。このような措置は、学生が自分の時間を適切に勉学に割く決意を強める一方で、大学の予算の大幅な救済に貢献することになる。さらに、世帯の貢献能力に応じた累進的な参加は、すべての人に対する無償化よりも公平である。

■大学への入学について

バカロレア(大学進学前に受験する共通学力試験)後の情報提供・進路指導システムを強化する必要がある。大学の各コースに対応する学問分野の前提条件をさらに精査する必要がある。講義のシステムを維持しながら、L1-L2レベルで小グループ(ワークショップ)のチュートリアルを大幅に展開する必要がある。遠隔教育の使用は特定の状況下では有用だが、可能な限り控える必要がある。

■大学における雇用について

大学における不安定な雇用は必ず解消されなければならないが、それは空きのあるポストを一括して公開するとともに、永続的なニーズにもとづいて雇用創出することで実現すべきである。管理業務の一部から教職兼担研究者(Enseignants-chercheurs)を解放するために、研究エンジニアの職位はかなりの数創出する必要がある。大学が果たすべき責務は、その任務の多様性をよく考慮し、研究に利用できる時間を保証するような方法で再定義することである。より適切な運営管理と、実際面での教職の軽減に向けて、教育研究行政職員(BIATSS)の雇用とキャリアは、必要な能力の引き上げを伴う再評価が不可欠である。再評価は時間数の追加の場合にも不可欠であり、在職中の教師の場合は上限が適用される必要がある。

■教職兼担研究者の採用とキャリアについて

前政権が着手した採用の規制緩和に頼ることなく、報酬と労働条件の両方の点で、キャリアをより魅力的にする必要がある。大学評議会(CNU)の審査による国家資格の取得(選考審査の構成と方法を検討する必要あり)は、准教授(MCF)職にアクセスするためのルールであり続ける必要がある。教授職にアクセスするには、研究指導資格(HDR)要件を維持する必要がある。MCF資格者に対してこの国家資格の廃止が正当化されているわけではないので、この国家資格は改めて取得する必要がある。

■機関の評価・政策について

各機関は、主として提供する教育の質とその研究チームの科学的生産の質に基づいて評価される必要がある。この二重性を考慮に入れるべく、評価組織を再構築する必要がある。

(第2回につづく)

[DW編集局+JSTパリ事務所]