[本文]

国・地域名:
EU
元記事の言語:
英語
公開機関:
欧州委員会(EC)
元記事公開日:
2022/05/18
抄訳記事公開日:
2022/06/21

REPowerEU:ロシア産化石燃料への依存度を急速に減らし、グリーン移行を加速する計画

REPowerEU: A plan to rapidly reduce dependence on Russian fossil fuels and fast forward the green transition

本文:

(2022年5月18日付、欧州委員会(EC)の標記発表の概要は以下のとおり)

欧州委員会(EC)はこのほど、ロシアによるウクライナ侵攻によって引き起こされた苦難と世界的なエネルギー市場の混乱への対応策として、REPowerEU計画を発表した。欧州のエネルギーシステム変革には二重の緊急性がある。一つは、経済的・政治的武器として使用され、欧州の納税者に年間1,000億ユーロ近くのコストを強いているロシア化石燃料へのEUの依存を終結させることと、もう一つは、気候危機対策である。欧州連合(EU)として行動することにより、欧州はロシア化石燃料への依存をより早く段階的に廃止することができる。REPowerEU 計画の対策では、エネルギー節約、エネルギー供給の多様化、住宅、産業、発電における化石燃料に代わる再生可能エネルギーの展開の加速を通じて、この目標に対応することができる。

復興・強靭化ファシリティ(RRF)は、REPowerEU 計画の中心であり、国境を越えたおよび国内のインフラの統合的計画とファンディングのほか、エネルギープロジェクトや各種改革を支援する。欧州委員会は、すでに加盟各国の既存の復興・強靭化計画(RRP)にある多数の関連改革と投資に加えて、RRPに REPowerEU に特化した章を組み込むべく、RRF規則に的を絞った修正を加えるよう提案している。

■エネルギー節減

欧州委員会は、欧州グリーンディール法の「Fit for 55」パッケージに基づく拘束力のあるエネルギー効率目標の9%から13%への引き上げを含む、長期的なエネルギー効率対策強化を提案している。このため、欧州委員会はこのほど、ガスと石油の需要を5%削減する可能性のある短期的な行動変化を詳述し、加盟国に家庭や産業を対象とした特定の広報キャンペーンを開始するよう促す「EUエネルギー節減広報」を発表した。加盟国はまた、エネルギー効率の高い暖房システム、建物の断熱材・電化製品の付加価値税率の引き下げなど、エネルギー節約を促進するための財政措置を活用することが奨励されている。欧州委員会はまた、深刻な供給途絶が発生した場合の緊急対策を定めている。

■供給源の多様化と国際的なパートナーの支援

EUは、国際的なパートナーと協力して数か月の間供給を多様化し、記録的なレベルのLNG輸入とより高いレベルのパイプラインガス供給を確保してきた。地域のタスクフォースが支援する新設のEUエネルギー・プラットフォームは、需要をプールし、インフラの使用を最適化し、サプライヤーへのアウトリーチを調整することにより、ガス、LNG、水素の自主的な共通購入を可能にする。次のステップとして、欧州委員会は参加加盟国に代わってガス購入を交渉し契約する「共同購入メカニズム」の展開を検討する。

このほど採択されたEU外部エネルギー戦略は、エネルギーの多様化を促進し、水素やその他のグリーン技術に関する協力を含む、サプライヤーとの長期的なパートナーシップの構築を促進する。本戦略は、「グローバル・ゲートウェイ」に沿って、グローバルでグリーンで公正なエネルギー移行へのEUの取り組みを優先し、エネルギー節減とエネルギー効率向上で価格への圧力を軽減し、再生可能エネルギーと水素の開発を促進し、エネルギー外交を強化する。

■再生可能エネルギー展開の加速

発電、産業、建物、輸送における再生可能エネルギーの大規模なスケールアップとスピードアップは、我々の独立を加速し、グリーン移行を後押しし、時間の経過とともに価格を下げることになる。欧州委員会は、再生可能エネルギーの2030年主要目標を Fit for 55 パッケージの下で40%から45%に引き上げる提案をしている。この全体的な目標の引き上げ設定により、次のような他のイニシアチブの枠組みが創成される。

▽2025年までに太陽光発電容量を2倍にし、2030年までに600GWを実装することに特化したEUソーラー戦略
▽新たな公共および商業建築物と新たな住居用建物にソーラーパネルを設置する法的義務が段階的に導入される「屋上ソーラー・イニシアチブ」
▽ヒートポンプの導入率を2倍にし、最新設備の地区・共同暖房システムに地熱エネルギーや太陽熱エネルギーを取り込む措置
▽重要な再生可能プロジェクトの遅くて複雑な認可手続き対策としての欧州委員会勧告、および再生可能エネルギーを最優先の公益として認識するための再生可能エネルギー指令の的を絞った改定。再生可能エネルギーに特化した「行き先(go-to)」エリアは、環境リスクの低いエリアで、認可プロセスを短縮・簡素化して、加盟国によって整備される。
▽脱炭素化が困難な産業や運輸部門の天然ガス、石炭、石油に代替するために、2030年までに域内の再生可能水素の生産量を1,000万トン、輸入量を1,000万トンにするという目標を設定する。欧州委員会はまた、生産が実質的な脱炭素化につながることを保証するために、再生可能水素の定義と生産に関する2つの権限委譲法を発表する。水素プロジェクトを加速するために、2億ユーロの追加ファンディングが研究向けに確保される。
▽バイオメタン行動計画では、新たなバイオメタン産業パートナーシップや共通農業政策などを通じて、2030年までに生産量を35bcmに増やすための資金的インセンティブなどのツールを設定する。

■産業および輸送における化石燃料消費の削減

エネルギー節減、効率化、燃料の代替、電化、および産業界による再生可能水素・バイオガス・バイオメタンの取り込み強化により、Fit for 55 の提案で予測されるものに加えて、2030年までに最大35bcmの天然ガスを節約することができる。

欧州委員会は、産業界によるグリーン水素の取り込みとイノベーション基金の下での REPowerEU 向け特別資金調達を支援する差金決済のための炭素契約を展開し、排出量取引収入を活用してロシア化石燃料依存からの転換をさらに支援する。

輸送セクターのエネルギー節減と効率化を高め、ゼロエミッション車への移行を加速するために、欧州委員会は、本セクターのエネルギー効率を大幅に向上させる目的で、貨物パッケージのグリーン化を提示する。また、一定の規模を超える公共および企業の自動車保有台数におけるゼロエミッション車のシェアを増やすための立法措置を検討する。

■賢明な投資

REPowerEU の目標達成には、現在から2027年の間に2,100億ユーロの追加投資が必要である。

REPowerEU の支援に、RRFに基づく貸付ですでに2,250億ユーロが利用可能である。さらに、欧州委員会は、EU排出権取引制度枠の売却で生じる200億ユーロの助成金で、RRFの資金枠を拡大する提案をしている。

現行のMFF(複数年次財政枠組)の下では、結束政策が、再生可能エネルギー、水素、インフラに投資することにより、最大1,000億ユーロで脱炭素化・グリーン移行プロジェクトを支援する予定である。RRFへの自発的な移行で、結束基金からの追加 269億ユーロが利用可能になる可能性がある。さらに共通農業政策からの75億ユーロも、RRFへの自主的移行を通じて利用可能になる。

汎欧州エネルギーネットワーク(TEN-E)は、レジリエントな相互接続EUガス・インフラの構築を支援してきた。約100億ユーロの投資と見積もられる限定的な追加ガス・インフラが必要とされる。「コネクティング・ヨーロッパ・ファシリティ」がこれを支援する。

[DW編集局]