[本文]

国・地域名:
EU
元記事の言語:
英語
公開機関:
欧州委員会(EC)
元記事公開日:
2022/05/18
抄訳記事公開日:
2022/06/28

EU防衛能力・産業・技術基盤強化策の向上:EU共同防衛調達枠組みに向けて

EU steps up action to strengthen EU defence capabilities, industrial and technological base: towards an EU framework for Joint defence procurement

本文:

(2022年5月18日付、欧州委員会(EC)の標記発表の概要は以下のとおり)

欧州委員会と上級代表はこのほど、防衛投資ギャップの分析結果を公表し、欧州防衛産業・技術基盤の強化に必要なさらなる措置と施策を提案した。ウクライナに対するロシアの理不尽な侵略は、欧州防衛に重大な影響を及ぼし、加盟国による軍事費の増大につながっている。今回の共同文書により、欧州委員会と上級代表は、加盟国による、より適切で、欧州のやり方での共同投資の支援を目指している。それはまた、防衛におけるEU施策の強化を求める「欧州の未来に関する会議」の文脈でなされた要請にも応えるものである。

上記共同文書は、防衛においてより強力な欧州を構築するという新たなレベルの目標を示している。特に、軍事装備の共同購入、より明確な優先順位を設定するための戦略的防衛計画策定のほか、欧州の防衛研究開発枠組みである欧州防衛基金(EDF)の強化など欧州産業基盤への支援に焦点を当てている。防衛協力を促進するためのEUイニシアチブは、NATO内でのより公平な大西洋横断的負荷分担と、より効果的な欧州の貢献強化にも役立つ。

■防衛投資のギャップ

欧州防衛機関(EDA)が実施した投資ギャップの分析を考慮に入れて、欧州委員会と上級代表は、防衛支出、防衛産業、防衛能力という3つの主要なタイプのギャップを検証する。

・防衛支出
ロシアによるウクライナ侵攻の直接の結果として、加盟国は、今後数年間でさらに2,000億ユーロ近くの防衛予算の増加をすでに発表している。これらの増加は不可欠ではあるが、何年にもわたる大幅削減と深刻な過少投資の後に生じたものである。1999年から2021年にかけて、米国の66%、ロシアの292%、中国の592%に対して、EUの防衛費総額の増額は20%だった。統括的アプローチがなければ、支出増はさらなる分断につながり、これまでになされた進歩を元に戻すことにつながる。

・防衛産業
本セクターの全体的な競争力にもかかわらず、困難とギャップが存在する。需要が分断されているため、この業界は各国境沿いに、特に航空・ミサイル・セクターの外側で構造化された状態にある。また、欧州の防衛産業および技術基盤が独自のEUソリューションを提供していない一部の主要防衛装備品に関しては、EU域外への依存が存在する。

・防衛能力
備蓄の補充、ソビエト時代のレガシーシステムの交換、防空・ミサイル防衛システムの強化という3つの緊急優先課題が重視されてきた。これらの緊急性のある能力ギャップに加えて、共同文書では、空、陸、海、宇宙、サイバー防衛の領域で、いくつかの特定の戦略的・中長期的能力に取り組むことを提案している。

■上記ギャップに対処するための措置

欧州委員会と上級代表は、共同調達を通じて欧州の防衛需要を強化し、工業生産能力への支援を目的とした措置を通じて供給を強化することを目的とした一連の非常に具体的な措置を発表した。

欧州委員会と上級代表/EDA長官は、加盟国と協力して、新たなセキュリティ状況に直面する非常に短期的な調達ニーズの調整を支援し、対立を解消するための、「防衛共同調達タスクフォース」を迅速に設立する。

タスクフォースの作業に基づいて、加盟国が協力して最も緊急かつ重大なギャップを埋めるよう支援するため、共同調達を通じて防衛産業能力強化を図る短期的なEUツールが、迅速な採択を目指して提案される予定である。欧州委員会は、加盟国が協力してこれらのニーズに取り組むよう奨励するべく、2年間で5億ユーロのEU予算を約束する用意がある。

上記短期的ツールは、防衛共同調達に向けたEU枠組みへの道を開くことになる。この目的で、2022年の第3四半期に、欧州委員会は「欧州防衛投資プログラム(EDIP)」規定を提案する。これにより加盟国が「欧州防衛能力コンソーシアム(EDCC)」を結成するための条件が確立される。EDCC内で加盟国は、(参加加盟国の使用のためにEU内で共同開発され、VAT免除の恩恵を受ける)防衛能力を共同調達する。さらに、関連するEU融資が、EUの関心が高いプロジェクトに提供される場合がある。

共同調達に対する支援は、EDFを通じた防衛研究開発に関するこれまでの取り組みを補完し、完結させるものである。

さらに、欧州委員会と上級代表は、共同のEU防衛計画と調達機能に向けた段階的な移行を提案し、焦点を当てるべき機能の優先順位をより適切に定義できるようにする。

最終的には、強化された欧州防衛協力には、欧州防衛産業能力を強化するための確固たる行動計画も必要である。この目的で、欧州委員会は次のことを実施する。

▽EDAと協力して、EUの現在および必要な追加産業製造能力の詳細なマッピングを実行する。
▽立法措置を含む「重要原材料」イニシアチブを提案し、防衛産業による重要原材料(CRM)へのアクセスを促進し、それによってEUのレジリエンスと供給の安全性を強化する。
▽産業能力増強に必要な防衛特有のスキルの利用可能性を確保するための、さらなる措置に取り組む。
▽民生用機器と防衛用機器の間の相乗効果を向上させるために、デュアルユースの研究・イノベーション枠組みの修正を検討する。
▽戦略的プロジェクトを展開することで、重要技術と産業能力を支援するさらなる措置に取り組む。
▽EU長期予算の中間レビューにおける優先課題の全体的なレビューの中で、欧州防衛基金(EDF)予算の増強およびコネクティング・ヨーロッパ・ファシリティ(CEF)を通じた軍事的機動性の強化を検討する。
▽新規参入者を引き付け、防衛イノベーションを支援するために、防衛 CASSINI の設立を加速させる。

欧州投資銀行(EIB)もまた、デュアルユースへの継続的な支援に加えて、欧州の防衛産業および共同調達への支援強化について検討することになる。

今回提案された措置により、EUは、NATO内でもより強力な国際的パートナーとなることが期待される。

[DW編集局]