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- 国・地域名:
- 米国
- 元記事の言語:
- 英語
- 公開機関:
- 全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)
- 元記事公開日:
- 2022/05/10
- 抄訳記事公開日:
- 2022/06/29
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NASEMが科学的発見を加速する「研究ワークフローの自動化」の開発促進を提言
- 本文:
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(2022年5月10日付、全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)の標記発表の概要は以下のとおり)
コンピュータ計算、実験室の自動化、人工知能(AI)のツールを統合した「研究ワークフローの自動化(ARW)」が、多くの分野で研究活動のスピードと効率を大幅に向上させる可能性を示していると、NASEMの新たな報告書は述べている。
報告書は、ARWの可能性を実現することによって、科学的発見のスピードが桁違いに加速され、研究事業が社会へより大きく貢献する可能性がある、と述べている。また、研究機関、資金提供者、その他の関係者に対して、ARWの開発を促進するための提言を行っている。
ARWは、実験の計画・実施、データ解析、自然現象の観察などに利用されており、その利用状況は分野によって大きく異なるが、多くの領域でARWの可能性を実現する開発が始まっている。例えば材料科学分野では、実験室の自動化と機械学習(ML)を組み合わせて、材料合成とテストに要する時間の短縮化が図られ、創薬分野では、能動学習アルゴリズムにより、効力のある化合物の同定のために必要な実験を減らすことができ、また社会科学や行動科学の分野では、新しいデータリソースや高度な分析が用いられるようになっている。
ARWは、研究のスピードと効率を高めるだけでなく、研究プロセスの特定のステップを自動化して把握することで透明性と反復性の向上を可能にし、研究における再現性、複製可能性、責任をもたらすことができる。
ARW の可能性を実現するために必要な行動として本報告書は、研究助成機関が、学会、研究機関、出版社など他のステークホルダーと協力して、ARWのための主要システム、ツール、プラットフォーム、データアーカイブを確実に構築し、持続させていくアプローチをより優先に行うことを提言している。
また本報告書は、オープン性と透明性を促進すること、責任あるAIとMLの原則に従うこと、可能で適切な場合には既存のツールの再利用と継続性を優先することなど、ARWが体現すべき設計原則を明らかにしている。研究資金を提供し、実行し、普及させる機関は、科学学会とともに、これらの原則に従ったARWを可能にする必要がある。
一方、ファンディング機関、研究機関、各学科は、ARWの可能性の実現を目指した行動(例えば、チーム科学や学際チームの奨励、ソフトウェア資源の開発と共有など)を奨励するよう、インセンティブと報酬の仕組みを変更して、ARWに相応しい文化を作り出す努力をする必要がある。
さらに、ARWの開発・利用に必要な人材育成を目的とした教育プログラムやキャリアパスの開発・実施を支援する必要がある。
法的・政策的な問題が特定の領域におけるARWの実施に影響し、そのため国際的なマルチステークホルダーによる取り組みが必要になる。例えば、ARWは、プライバシー保護に関わる機関の方針や政府の規制を遵守しつつ、データ利用の透明性をもたらすように設計する必要がある。
[DW編集局+JSTワシントン事務所]