（2022年6月15日付、国防省（MOD）発表の概要は以下のとおり）

最先端の英国人工知能（AI）国防技術の将来計画が、このほど発表された新しい国防AI戦略で明らかにされた。戦略とそれに伴うAIの「野心的で安全かつ責任ある」使用に関するポリシーが、新設の国防AIセンター（DAIC）を支える。このセンターは、英国軍全体で迅速かつ野心的にこれらの技術を支援・実装化・革新する先見的な拠点となる。

世界の安全保障に対する絶え間なく進化する脅威に直面して、国防AI戦略は、英国が研究、開発、実験を優先し、効果的、効率的、信頼できる経路を通じて、最新の装備を戦場に届ける新しいコンセプトと最先端の技術に基づき、軍隊の能力に革命をもたらす、研究、開発、実験を優先付ける方法を概説している。コンセプトには、人々を危険にさらすことなく物資を届けることができるAI対応の自律戦闘車両や補給システムや、一連の小型ドローンによってキャプチャされた何時間もの詳細な映像を利用するスマートシステムによって導かれる最前線の兵士たちが含まれる

ポリシー・ペーパー「国防AI戦略」のエグゼクティブ・サマリからその概要を以下に記す。

このビジョンは、AIの観点から、当該規模の国防組織としては。世界で最も効果的、効率的、信頼性が高く、影響力のある存在になることである。

・効果的であること
戦闘に勝つ能力と支援機能の提供を通じて、また英国の同盟国やAIエコシステムと協力・提携する能力の観点から。
・効率的であること
技術を革新的に活用して、組織全体にわたって、機能を提供し、作戦を遂行し、生産性の便益を実現する。
・信頼性が高いこと
AIシステムの安全性と信頼性、基本的価値観に沿った合法的・倫理的なAIの使用に対する明確な取り組みについて、一般国民、協同相手、関係者から信頼されていること。
・影響力があること
AI技術のグローバルな発展の形成、AI関連の問題の積極的管理、協力および模範による主導するという点で。

総合レビュー（2021年）では、2030年までに「科学技術超大国」としての英国の地位を確保するための中核として、国としての AIにおける卓越性を強調している。国家AI戦略（2021年）は、産業界全体のルールを書き変え、大幅な経済成長を促進し、生活のあらゆる分野を変革する大きな可能性を示している。統合作戦コンセプト（2020年）は、情報の普及と急速な技術変革が戦争の性格をどのように変えるかを述べている。軍事作戦のあらゆる領域で、紛争はますます複雑で動的になっている。新しい技術は、大量のデータを生成し、新たな脅威と脆弱性をもたらし、高度な次世代機能（群ドローン、高速兵器、高度なサイバー攻撃など）を通じて潜在的な攻撃の規模を拡大する。

これらの技術（およびそれらが可能にする作戦進行）は、意思決定時間を劇的に短縮し、人間の限界まで理解の負荷を課し、多くの場合、マシン速度での応答を必要とする。国防勅令書（2021年）が述べているように、「将来の紛争は、採用されたAIソリューションの速度と有効性により、勝敗が決する可能性がある」。同時に、情報作戦は、（注意をそらし、悪意のある活動を隠蔽し、国民の支持を損なう）偽りのシナリオに対抗するために、ますます重要になっている。つまり、国防の抜本的な激変が進行中であり、AI関連の戦略的競争が激化している。我々の対応は、迅速で、野心的で、包括的でなければならない。

我々は「AI対応」組織に変身しなければならない。文化、スキル、政策の変更を積極的に推進し、リーダーをトレーニングし、労働力をスキルアップし、国防AI・自律部隊を強化する。国防AIスキル枠組みと新規のAIキャリア開発・昇進経路を設ける。データは重要な戦略的資産であることを認識し、したがってデータを適切に管理し、活用する。国防デジタル戦略（2021年）と国防データ戦略（2021年）を実装し、“デジタル・バックボーン”と国防AIセンターを新設する。この変革の一部の要素（特にデジタル・イネーブラーとデータ・イネーブラー）は、新たなAI技術戦略に基づいて、国防全体ベースで提供または支援される。しかし、これは我々の組織のあらゆる部分にとっての課題であるものの、特定の組織、その業務、AIによって提供される機会に応じて、その課題の性質が異なる。

国防の優位性に向けた水準の速度・規模で、AIを採用・活用し、AIを最優先課題の1つとして確立し、能力戦略および部隊展開プロセスにおける戦略的優位性の主要な源泉として確立する必要がある。短期的には、「AI Now」（成熟したデータサイエンス、機械学習、高度のコンピューティング統計技術）の体系的な展開と採用を通じて、有効性、効率性、生産性を向上させる。並行して、「AI Next」に投資する。これは、より広範な研究開発パイプラインに統合された最先端のAI研究開発である。複数の分野に跨る統合された実行チームが、AIの採用と、人間の認識、創意工夫、責任を機械速度の分析能力と組み合わせた効果的な人間・マシーン・チームの開発のアプローチの中心になる。AIシステムの脆弱性と脅威を評価および軽減するためのセンターを設立する。我々は、同盟国や協同相手と緊密に連携し、共通の課題に対処する革新的な機能ソリューションを開発すると同時に、ニッチでありながら不可欠なAI開発・試験機能を維持するという負担を分担する。

[DW編集局]