[本文]

国・地域名:
EU
元記事の言語:
英語
公開機関:
欧州委員会(EC)
元記事公開日:
2022/07/05
抄訳記事公開日:
2022/08/12

EUの2022年版研究・イノベーションパフォーマンス報告書

New Research and Innovation Performance report: Building a sustainable future in uncertain times

本文:

(2022年7月5日付、欧州委員会(EC)の標記発表の概要は以下のとおり)

欧州委員会は、2022年版の科学・研究・イノベーションのパフォーマンス(SRIP)報告書を発表し、グローバルな文脈におけるEUのイノベーションパフォーマンスを分析した。同報告書は、研究・イノベーション政策が、繁栄の源として、また変化の触媒としての研究・イノベーションの重要な役割を活用することにより、包括的で持続可能で競争力がありレジリエントな欧州の構築にどのように資するかについて洞察している。報告書はまた、コロナウイルスのパンデミックやロシアのウクライナ侵攻により、欧州が新たな予期せぬ課題に、迅速かつ適切に対応するための備えを強化するよう求めている旨、強調している。

本報告書は、科学が持続可能で競争力がありレジリエントな欧州の構築を支援する5つの方法を、次のような政策で示している。

▽誰も置き去りにしない豊かな社会に向けて、グリーン経済とデジタル経済の実現を支援する。
▽安全な経済、多様なサプライチェーン、将来の課題への対処に役立つ知識を活用して、将来の変化と予期しない変化の両方に備える。
▽解決策を見出すため、人、企業、機関にさらなる投資を行う。
▽個人と組織を結び付け、スキルと知識の活用と共有を図り、地域間・国間のギャップを減らし、より強力なイノベーションシステムを実現する。
▽優先領域を対象として市民と共同で創設された適切な制度的・財政的枠組み条件を確保する。

今年の報告書は、グローバル環境において、EUが科学的生産と技術的成果の点で依然として強力なプレーヤーであることを示している。世界人口に占める割合はわずか6%であるが、世界の研究開発投資の約18%、世界で最も引用されている科学論文の21%を占めている。技術的成果に関しては、EUは気候分野で世界をリードしており、特許出願全体の23%を占めている。EUはまた、生物経済(23%)や保健(17%)などの他の分野でも大きく貢献している。しかし、EUの主要な貿易相手国が近年、イノベーションパフォーマンスをより速いペースで改善しているため、この立場は損なわれつつある。セクター間で大きな違いはあるが、EUにおける研究開発投資は危機の間に減少した。保健サービスとICTサービスにおけるEUトップの研究開発投資家は、2019年~2020年の間に研究開発投資を増やしている(それぞれ10.3%と7.2%)。しかし、ICTプロバイダー(-3.6%)、化学(-3.7%)、自動車(-7.2%)、航空宇宙(-22.6%)などの他のセクターのEUトップ研究・イノベーション投資家は、コロナ危機の間に研究開発投資を減らしている。

EUにおける企業ダイナミズムの低下は、イノベーションと経済成長に影響を及ぼす。EUの企業環境とイノベーション能力を改善するには、金融へのアクセスにおける欠陥、イノベーションを妨げるような規制の枠組み、業績の良い企業と遅れている企業との間の根強い格差、人材を引き付けて保持することの難しさなど、長年の問題に対処するためには新たな活力が必要であると、報告書は述べている。このような問題は、新欧州イノベーションアジェンダに関する政策文書により対処される予定である。

[DW編集局]