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- 国・地域名:
- 英国
- 元記事の言語:
- 英語
- 公開機関:
- ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)
- 元記事公開日:
- 2022/07/22
- 抄訳記事公開日:
- 2022/08/17
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英国の重要鉱物戦略
- 本文:
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(2022年7月22日付のビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)の標記発表の概要は以下のとおり)
標記戦略文書から「英国の目標とアプローチ」を述べた部分を抜粋要約して以下に記す。
英国には豊富な鉱物資源があり、これらの国内資源は社会や環境に役立つ方法で開発することが重要である。しかし、重要鉱物サプライチェーンのすべてを国内に頼ることは不可能である(望ましくもない)。いかなる国もこうした資源のすべてを国内に持つことはなく、したがって、重要鉱物の調達については常に国際的に考える必要がある。
今日、英国は、自国産業向けの鉱物の安定供給について、市場原理に大きく依存している。我々の将来の鉱物需要の殆どは、市場から十分調達可能と思われる。しかし、一部の重要鉱物については、市場は効果的に機能していない。1980年代以降、中国は介入と補助金を通じて、生産能力を高め、多くの重要鉱物の市場支配力を確立してきた。現在、オーストラリア、カナダ、日本、米国、欧州諸国を含む各国政府も、自国向けの供給を確保するための取り組みを加速しており、英国はこれらに後れを取らないための戦略を必要としている。
したがって、我々のアプローチは、世界的な鉱業大手の発祥地であり、責任ある鉱業金融、金属取引、標準の中心でもあり、また先進的な製造業における重要鉱物の主要消費国でもあるという、英国の国際的な地位を活用するものである。英国には、鉱業と鉱物の伝統、多数の採鉱装置メーカーやサービス企業、重要鉱物の採収、加工、リサイクルに関する世界屈指の研究力と革新力がある。何世紀にもわたって蓄積した専門知識を基盤として、英国をイノベーションとスキルのリーダーとして再度位置付けることができる。英国にはまた、規制交渉に関する専門知識、多国間フォーラムへの広範な関与、鉱物を豊富に産出する国々や消費市場との強力な関係を活用して、国際的な交渉役を務める役割もある。
本戦略は、(可能かつ相応な範囲で)英国のネットゼロ社会への移行、主要製造セクター、国家安全保障において信頼を高めつつ、リスクを低減し、重要鉱物サプライチェーンのレジリエンスを向上させることを目的としている。困難な世界状況において、英国の新たな重要鉱物戦略は、レジリエンスを高め、リスクを低減し、国際協力を展開することを意図するものである。
本戦略は、新たに定めた以下のような重要鉱物へのアプローチを通じて実行する。
■英国の国内能力向上を加速させる
1)企業にとって実行可能で、且つ社会と自然環境に役立つ場合には、国内生産を最大化する。
・英国にどのような重要鉱物があるのかを調査する。
・英国の能力開発を加速する資金支援の指針を示す。
・重要鉱物の国内での探鉱と採掘への障壁を減らす。
・精製および(電池材料等の)中間製品製造の戦略的拠点として、英国をアピールする。
2) 採鉱と鉱物に関わる技術を再構築する。
・次世代の採鉱(技術)者、地質学者、エンジニアなどを育成する。
・産業クラスターの発展を支援する。
3) 重要鉱物のサプライチェーンにおける課題を解決するために、最先端の研究開発を実施する。
・イノベーションを促進し、英国を重要鉱物および鉱業に関わる技術の中心地として再構築する。
4)一次供給への圧力を軽減する為、英国の重要鉱物の循環経済の加速、即ち、回収率、再利用率、リサイクル率、資源効率の向上により、英国が有するものをより有効に活用する。
・英国の重要鉱物のより効率的な循環経済に向けたイノベーションを促進する。
・英国の重要鉱物循環経済の発展を加速するための資金支援の指針を示す。
・リサイクルと回収を促進するための法規制を検討する。■国際パートナーと協力する
5)供給源を世界中で多様化し、需要増加へのレジリエンスを高める。
・国際的な重要鉱物サプライチェーンを多様化する取り組みを支援する。
・深海底の鉱物について詳細な調査を行い、それらを採掘する際の課題と機会を評価する。
6) 海外の多様で透明性があり信頼できるサプライチェーンに参加する英国企業を支援する。
・英国企業が海外で責任ある多様なサプライチェーンの構築に参加することを支援する。
7)英国への供給のレジリエンス向上を図るべく、外交、貿易、開発
に関わる国際的な関係を発展させる。
・重要鉱物のバリューチェーンにおける世界的な課題の解決に向けた共同作業を促進するために、重要鉱物の主要関係国と二国間協力を行う。
・世界的な課題に対処するべく、多国間パートナーシップを引き続き構築する。■国際市場を強化する
8)混乱時の脆弱性を減らし、信頼できる企業の競争の場を公平なものとしつつ、環境・社会・ガバナンス(ESG)の取り組みの実効性を高める。
・サプライチェーンのレジリエンスを向上させ、信頼できる英国企業の海外での競争の場を公平なものとするため、ESGパフォーマンスを向上させるグローバルな取り組みにおいて主導的な役割を果たす。
・英国における資源の持続可能な開発の標準化によって、ロールモデルとなる。
9)データとトレーサビリティの向上を通じて、十分に機能し、透明性のある市場を開拓する。
・重要鉱物がどこで生産され、どのように取引され、どこで使用されているかを、現在と将来の両方にわたって調査する。
・グローバル市場をより効果的に機能させ、透明性を高める。
・英国企業が鉱物の産地を追跡できるような革新的な技術を推進する。
10)ロンドンを重要鉱物金融の信頼できる世界の中心地ならしめる。 [DW編集局]