[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
大統領府
元記事公開日:
2022/07/14
抄訳記事公開日:
2022/09/06

人工知能の研究開発支援のための連邦クラウドコンピューティング利用事例と課題

Lessons Learned from Federal Use of Cloud Computing To Support Artificial Intelligence Research and Development

本文:

(7月14日付、大統領府による標記発表の概要は以下のとおり)

2020年11月、E大統領令13859に従い、連邦政府の人工知能(AI)特別委員会は、連邦政府が資金提供するAI研究開発のためのクラウドコンピューティングリソースの利活用に関する勧告を行った。この勧告を受けて、AI特別委員会の運営部門である国家科学技術会議(NSTC)の機械学習・AI(MLAI)小委員会は、2021年に共通課題とベストプラクティスを収集する取り組みを開始した。本報告書は、MLAI小委員会によるこの取り組みを取りまとめたものである。
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1.得られた教訓
・投資の効果
商用クラウドコンピューティングリソースを活用してAI研究開発の推進に着手した機関は、最先端機能への持続的かつオンデマンドなアクセス提供され、新領域でのAIの実験・利用の加速、研究結果の再現性と拡張性の実現という点で投資のメリットを実感している。商用クラウドを利用することで、自前で体制を整える場合に比べて、より迅速に特殊なAIハードウェアにアクセスすることができるようになり、さらに、クラウドのコモディティ化により、絶えず技術の更新が行われ、常に最新の計算能力を利用できるようになった。

・ベストプラクティス
専任管理チームの設置: これにより、各機関はクラウドコンピューティングへの適正なアクセスを管理監督することができた。また、ユーザーに教育訓練を行い、要求リソースの適切性評価も行うことができた。
ユーザー認証: 権限のあるユーザーのみにアクセスを制限することに加え、二要素認証を導入したことで、基本的なセキュリティとアクセス管理能力が提供された。
トレーニングと教育: スキルギャップに対処する教育訓練を施し、公平なアクセス機会を提供するとともに、必要なリソースに的確にアクセスできる能力を構築した。
リソースとワークフロー: 事前計算されたワークフローによって、重複作業が削減され、共通の調査開始点へのアプローチが容易になった。

・共通の課題
ユーザー認証がボトルネックになることが示唆された。管理組織の資金及び人員不足によって、この問題解決に遅れを生じさせる可能性があるほか、プライバシーやアクセスに関する管理当局や政府全体のガイダンスがないため、機関ごとのポリシーや手順にばらつきが生じる。 また、データの保管とアクセスにコストがかかり、複数のチームが共有データにアクセスすることを複雑にすることや、各ユーザーが、自分の研究に関連するデータ、実験、結果を容易に見つけられるようにする必要があることなどの課題も見いだされた。

2.将来のビジョンと今後の可能性
セキュリティ、プライバシー、アカウンタビリティを維持したまま、複数の商用クラウド・サービス・プロバイダーから計算、データセット、ストレージにアクセスできるシームレスなマルチクラウドエコシステムの構築が求められる。連邦政府機関と、クラウド・サービス・プロバイダーは、この未来を実現するために行動を起こす必要がある。具体的には、商業用クラウド・コンピューティング・プラットフォームへの連邦政府の統合投資をより効果的に活用すること、各機関のクラウドプログラムからベストプラクティスを収集し共有すること、マルチクラウド展開のための標準的方法をサポートできるオープンソース・テクノロジーを活用・育成を支援すること、などがあげられる。

[DW編集局+JSTワシントン事務所]