[本文]

国・地域名:
ドイツ
元記事の言語:
ドイツ語
公開機関:
マックスプランク協会(MPG)
元記事公開日:
2022/07/25
抄訳記事公開日:
2022/09/20

化石燃料の気候中立的な使用法検討の提案

Die unerwartete Zukunft von Öl und Gas

本文:

(2022年7月25日付、マックス・プランク協会(MPG)による標記発表の概要は以下のとおり)

現下のエネルギー価格の高騰は、近い将来に発生する可能性が高いジレンマを覆い隠している。即ち、多くの国で石油と天然ガスを使わずにエネルギー生産が行なわれるようになるほど、その価格は下がることになる。これによりエネルギー転換を行なえない、または望まない国々にとって、化石燃料の使用は、ますます魅力的なものとなる。著者は化石燃料の使用について、現行の方法に代わる、新たな利用法の検討加速を提言したい。

■化石燃料の需要が減少すれば、残った埋蔵量の価値は下がる。
市場の論理に従えば、将来における石油とガスの需要の減少は、現在における供給の増加につながり、価格が低下する。それは、代替エネルギーの市場競争力を失わせ、燃料としての石油とガスの利用を増やすことになる。短期的には、ロシアのウクライナ侵攻に対する制裁措置のために、市場価格は上がっているが、石油とガスの埋蔵量は巨大なままであり、今後、国際的な気候変動協定が成立すれば、長期的には需要が減少していくことになる。従って、逆説的になるが、将来の化石燃料の使用を減らそうという現在の取り組みは、気候変動対策に逆行するものとなる。

■化石燃料を気候にやさしい形で使用すれば、市場は変わる。
石油とガスは、使用を減らすのではなく、賢く使うのがよい。今日すでに不足しており、価格は上昇しているが、これはエネルギー転換の動きを後押しする。何故なら、気候にやさしい新たなエネルギーコンセプト「ブルー水素」は、石油とガスに競争力を持たせることになるためだ。例えば、天然ガスの大半を占めるメタンの触媒熱分解プロセスにより、CO2の排出なしに水素を生産するのみならず、貴重なナノ材料となる純粋な炭素の生産も可能とする技術が開発されている。この触媒熱分解に必要なエネルギーは、「グリーン水素」生産に必要なエネルギーの約8分の1で済むとされる。

■将来の需要確保は、化石燃料の売り急ぎを止める。
CO2を排出しないメタンの触媒熱分解の大規模利用には、まだ時間がかかるかもしれないが、こうした気候にやさしい石油とガスの使用法を直ちに始める必要はない。将来も化石燃料が使い続けられる見通しが立てば、売り急ぎによる価格の下落は避けられる。ブルー水素の他にも、炭素繊維、建設用断熱材、プラスチック製品は、マイクロプラスチックや焼却ガスによる汚染などの問題の解決は必要だが、化石炭化水素を長期的に固定化できるという意味で、カーボンニュートラルな利用法となり得る。

■再生可能な原材料を使った製品の利用促進は、逆効果も。
天然ガスと石油の売り急ぎを止める上で重要なのは、天然ガスと石油の気候中立的な使用を増やし、その需要と価格を維持することである。木材など、持続可能な資源から作る製品の利用促進は、化石燃料の気候中立的な利用を減らし、石油とガスの燃料としての使用を増やし、結果的にCO2排出を増やすことにつながる。石油とガスから作る、気候に優しい製品の開発を促進する政策がより適切である。

[DW編集局]