[本文]

国・地域名:
ドイツ
元記事の言語:
ドイツ語
公開機関:
マックスプランク協会(MPG)
元記事公開日:
2022/08/01
抄訳記事公開日:
2022/10/18

ドイツは今こそ水素パイプラインの建設を

„Wir müssen jetzt Wasserstoff-Pipelines bauen“

本文:

(2022年8月1日付、マックスプランク協会(MPG)による標記発表の概要は以下のとおり)

気候変動に加えて、ウクライナでの戦争と差し迫ったガス不足によって、化石燃料依存の出来るだけ早い解消、とりわけロシアのガスと石油からの脱却のための議論が必要になっている。MPGフリッツハーバー研究所のシュレーグル(Robert Schlögl)所長に、連邦政府のエネルギー転換のための現在の措置をどのように評価しているか、また何をする必要があるか、そして科学が貢献できることは何かについて聞いた。

■政府がとった施策に対する評価は?
政府はかなり多くのことをやってきたと言える。短期的には、これ以上のことはできないと思う。しかし、暖房を一晩切るように訴えるよりも、歴史的な過ちが我々を危険な状況に陥れたことを人々にはっきりと伝えた方がよい。短期間で元に戻せるような問題ではない。シャワーを 1 分短くしたり、夜に温度を下げたりしても、問題は解決しない。

■過去に何がうまくいかなかったのか?
ロシアのガスへの依存だけでなく、ドイツのシステムに問題がある。我々は原子力発電所を多数保有するフランスに依存して、安定した送電を行ってきた。また天然ガスのロシアからの調達量は、10 年前の 30%から現在は 55%となっているが、金額にのみ注目し、依存度の増大に気が付かなかった。エネルギー政策には、供給の安定性・持続可能性・価格の三角形があり、相互に関連している。三角形の一方向に移動すると、他の 2 方向は自動的に悪化する。

■冬を乗り切るには何をする必要があるか?
石炭火力発電所の稼働を増やし、夏の間に不要な暖房用のガスをすべて貯蔵に回す必要がある。11月までではなく、8月中に完了させる必要がある。

■原子力発電所は稼働し続けるべきか?
原子力発電所を稼動させることは、ナンセンスである。今、原子力発電に戻ることは、この国の社会平和を終わらせるだろうと考えている。エネルギーシステムは、すべてのセクターに必要なエネルギーを提供するように構築されなければならない。ドイツには、エネルギーの自給自足ではなく、グローバルな再生可能エネルギー市場が必要である。最も効率的な場所で再生可能なエネルギーが生産され、それらの多様な輸入先を確保することで、エネルギーの問題は解決する。

■科学が貢献できることは何か?
2年前にBMBFがTransHyDEプロジェクトを立ち上げ、その中でドイツにおける水素輸送について調査している。5年後に水素パイプラインが完成するように、今水素パイプラインの建設に取り掛かる必要がある。20年後には、水素へのエネルギー転換を実現したい。しかし今すぐ始めなければ20年プラスx年の時間を要することになる。
核融合は22世紀のもので、今は役に立たないが、研究は続けなければならない。ただ、科学的な困難が多数ある。触媒はあらゆるところで必要とされるが、そのほとんどがうまく機能しておらず、解決すべき課題は多い。この分野ではマックスプランク協会でも多くの研究が行われている。

[DW編集局]