[本文]

国・地域名:
EU
元記事の言語:
英語
公開機関:
欧州委員会(EC)
元記事公開日:
2022/10/04
抄訳記事公開日:
2022/11/08

EU、初の量子技術拠点6か所を展開

EU deploys first quantum technology in six sites across Europe

本文:

(2022年10月4日付、欧州委員会の標記発表の概要は以下のとおり)

本日、欧州高性能コンピューティング共同事業(EuroHPC JU)は、欧州初の量子コンピュータを設置する6拠点(チェコ、ドイツ、スペイン、フランス、イタリア、ポーランド)を発表した。これらの量子コンピュータは、各地で既存のスーパーコンピュータと統合され、欧州全域で幅広いネットワークを形成する。総投資額は1億ユーロを超え、その半分はEUから、残りの半分はEuroHPC JUに参加する17か国から拠出される。研究者と産業界は、欧州のどこにいても、最先端技術に基づくこれら6台の量子コンピュータにアクセスできるようになる。

新しい量子コンピュータは、欧州の産業界・学界からの、量子コンピューティングリソースと潜在的な新しいサービスに対する需要の高まりにも対応する。現在のシステムでは数か月から数年を要する保健・気候変動・ロジスティクス・エネルギー使用量管理などの分野の複雑な問題を数時間で解決でき、消費電力もはるかに少なくて済む。

新しい量子コンピュータは、2023 年後半までに上記6拠点で利用可能となる予定である。これらは、以下のような欧州の産業・科学・社会に関わる幅広い応用を支援する。

・人体の「デジタルツイン」の作成による、より迅速かつ効率的な新薬開発(仮想的な臨床試験など)
・複雑な物流やスケジューリング問題の解決による時間と燃料の節約
・飛行機用ポリマー、自動車用触媒コンバータ、太陽電池、エネルギーを無限に貯蔵可能な室温超伝導体など、新材料の仮想環境での開発と実証試験

これらの新量子コンピュータは、2025年までに初の量子加速コンピュータを開発し、2030 年までに量子技術能力の最先端に立つという「デジタルの10年 (Digital Decade)」の目標を達成するための一歩である。これらのコンピュータは、EUが資金提供する量子イニシアチブ、各国の研究プログラム、そして民間投資で開発される欧州の技術を活用し、欧州のハードウェアとソフトウェアのみで構成される。

今回の発表は、EUがスーパーコンピューティング・インフラの促進策である、欧州のコンピュータ・シミュレータの統合という大きな取り組みの一環である。今後、さらに多くの量子コンピュータが導入される予定である。量子コンピューティング、より具体的には量子ソフトウェアをさらに発展させるべく、欧州委員会は、量子コンピュータ・シミュレータの学術的および産業的ユースケースに焦点を当てた、「科学と産業のための中核的研究拠点(COE)」の設立を計画している。産業界、学界、およびより広範な量子技術ユーザーコミュニティのすべての人々を対象としたこれらの中核拠点は、現在の「高性能コンピューティング中核拠点」と同様に、欧州の各機関に対して、サービス・支援・ライブラリを提供し、学術および産業用の量子アプリケーションの基準となるだろう。

[DW編集局]