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- 国・地域名:
- 米国
- 元記事の言語:
- 英語
- 公開機関:
- 大統領府
- 元記事公開日:
- 2022/09/08
- 抄訳記事公開日:
- 2022/11/16
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OSTPが、暗号資産の気候・エネルギーへの影響に関する報告書を発表
FACT SHEET: Climate and Energy Implications of Crypto-Assets in the United States
- 本文:
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(2022年9月8日付け、大統領府による標記発表の概要は以下のとおり)
気候変動の問題に関してバイデン政権は、2030年までに温室効果ガス排出50%削減、2035年までに電力網の脱炭素化、遅くとも2050年までに温室効果ガス排出のネットゼロなどを公約している。これらの野心的な目標を達成するためには、新興技術がネットゼロ、クリーンエネルギーの未来に貢献しなければならない。一方、分散型台帳技術(DLT)に基づくデジタル資産の利用が拡大しており、その結果、マイニング施設周辺地域の電力使用が増加し、温室効果ガスの排出増や、その他の汚染、騒音等の影響をもたらしかねない。この技術のエネルギー要求度と使われる電力源によっては、暗号資産の急速な成長は、米国の気候変動に関する公約達成努力を阻害する危険性がある。
本年3月にバイデン大統領が発出した「デジタル資産の責任ある開発の確保に関する大統領令」は、デジタル資産の責任ある開発には、気候への悪影響や環境汚染の低減が含まれると明示した。この大統領令に基づき、本日、科学技術政策局(OSTP)は米国における暗号資産が気候とエネルギーへ及ぼす影響に関する報告書を発表した。
世界の暗号資産による年間電力使用量は、2018年~2022年に急速に増加し、2倍から4倍になると推定されている。2022年8月現在、その総電力使用量の推定値は、年間1,200億~2,400億キロワット時で、アルゼンチンやオーストラリアなど多くの国の年間総電力使用量を上回る。これは、世界の年間電力使用量の0.4%から0.9%に相当し、世界の従来型データセンターの年間電力使用量に匹敵する。
ほとんどの暗号資産の電力は、ビットコインとイーサリウムのブロックチェーンで使用され、2022年8月現在、ビットコインは世界の暗号資産電力使用量の60~77%を、イーサリアムは20~39%を占めると推定される。
マイニング機器のエネルギー効率は向上しているが、電力使用量は増加の一途をたどっている。エネルギー消費量の少ない暗号資産台帳技術は存在するものの、属性や用途は異なる。代替暗号資産技術への切り替えによって、全体の電力使用量を現在の1%未満に劇的に削減できる可能性はある。
米国は現在、世界最大のビットコインマイニング産業を抱え、世界のビットコイン活動の38%以上を占め、今後急速に成長する可能性がある。にもかかわらず、将来の暗号資産による電力需要予測は不明確であり、この需要増を把握し監視するより良いデータが必要となる。
暗号資産は、世界の年間温室効果ガス年間排出量の約0.3%に相当する1億4,000万±3,000万トンの二酸化炭素(Mt CO2/y)を排出している。米国の暗号資産の活動は、約25~50 Mt CO2/yを発生させていると推定され、米国の温室効果ガス総排出量の0.4~0.8%に相当する。これは、米国の鉄道で使用されているディーゼル燃料からの排出量とほぼ同じである。
DLTは、炭素クレジット市場のような様々な環境関連市場インフラを強化する役割を果たす可能性がある。そのユースケースはまだ新しく、ポジティブ・ネガティブ双方が存在し得るが、この技術の責任ある開発によって、エネルギー強度を低減し、環境被害を最小限に抑えつつ、DLTの活用を促進できる可能性がある。
(本報告書の主な提言)
デジタル資産の責任ある開発を保証するために必要な検討事項は以下のとおり:
1.暗号資産による温室効果ガス排出や環境正義への影響、およびその他の地域的影響の最小化
2.エネルギーの信頼性の確保
3.暗号資産利用による気候とエネルギーへの影響の把握、監視、緩和のためのデータ取得
4.エネルギー効率化基準の推進
5.環境パフォーマンスの透明性と改善の推進
6.理解とイノベーションを向上させるための更なる研究の推進 [DW編集局+JSTワシントン事務所]