[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
国家科学技術会議(NSTC)
元記事公開日:
2022/09/29
抄訳記事公開日:
2022/11/30

NSTCによる国際科学技術協力に関する提言

Biennial Report to Congress on International Science & Technology Cooperation

本文:

(2022年9月29日付、国家科学技術会議(NSTC)による標記発表の概要は以下のとおり)

科学技術に関する国際協力は、企業が人類の理解の限界を押し広げ、国境を越えた災害の影響を最小限に抑え、国境を越えた専門知識と能力を活用し、地域社会の架け橋となることを可能にする。現在の地政学的な競争において、科学技術は中心的な役割を担っており、国の科学技術力は、地政学的状況の変化に適応するための重要な要素であると同時に、国際情勢に影響を与える手段であることは、広く認識されている。米国が、国内外およびグローバルな課題への対処において世界の先頭に立ち続け、グローバルな競争において成功するために、米国は十分に機敏でなければならず、ますます困難で、相互に影響し合う国際情勢に対応するには、外交的能力と実践的能力の双方を備えている必要がある。

2000年にオルブライト元国務長官が、「科学外交:21世紀に向けての国家の強化」と題する政策を発表し、国務省の科学技術外交組織の改革に着手した際、科学技術外交能力の強化には、新たな人材と資源を最優先した長期にわたる取り組みが必要であるとの認識を示していた。本報告書は、その取組みを引き継ぐものであり、米国の取り組みにおける優れた点と足らざる点を明らかにし、米国の価値を広め、経済及び国家の安全保障の目標を推進しつつ、グローバルなニーズに確実に応えるための提言を行うものである。

米国の取り組みにおける優れた点:
1.米国は、依然として科学技術の多くの分野で世界的なリーダーである。ただし、競合相手は追いつきつつある。
2.研究者主導の国際共同研究が機能している。
3.米国は、グローバルな科学の基準を設定し、知らしめている。
4.米国は、科学・技術・工学・数学(STEM)人材を惹きつけ、確保している。ただし、より多くの海外人材が米国を選択し、かつ米国に留まるようにするためにもっとできることがある。
5.米国は、国際的な科学技術への関与により、外交および国家安全保障上の目標を達成することができる。

米国の取り組みの足らざる点:
1.米国は、国際的関与のための戦略的機会を逸しており、その結果取り残されている。
2.米国が先頭に立つ野心的大規模国際協力案件の数は限られており、他国が支援するケースが増えている。
3.各連邦政府機関は、開発、安全保障、研究の優先順位についての差異を最小化し、科学活動と外交政策・国家安全保障上の利益を調整する必要がある。
4.米国は多様性、公平性、包摂性、アクセス性(DEIA)の目標を達成できそうにない。
5.F-1、J-1ビザ保持者が留学終了後に米国に留まりたい場合、ビザの種類や移民資格を変更せねばならないという法的要件は、外国の才能を排除することになりかねない。
6.連邦科学機関は、国際共同研究のための人員配置を優先していない。
7.科学技術協力協定(Science and Technology Agreements)は、研究機関にとって共同活動を加速させる良いツールであるが、米国が満たせないような資金や二国間関与への期待を高めてしまう可能性がある。

提言:
1. 中低所得国の学生が米国の科学技術事業に参加するのを支援する仕組みを検討する。
2. STEM 人材が米国を離れる、或いは他国を選ぶ理由を調査する。
3. 国際的科学技術分野における政府機関間情報の提供機会を拡大する。
4. 米国と外国の技術機関間交流を模索し、障壁に対処して、緊密な協力機会を増やす。
5. 研究・イノベーション環境を強化し、米国のグローバルな科学技術リーダーシップを強化する。
6. 中華人民共和国の5ヵ年計画や欧州連合の7ヵ年助成枠組みのような、他国の長期研究助成政策に対抗できる、国際科学協力への資金提供の柔軟かつ長期的な取り組みを開発する。
7. 国務省内に、海外パートナーとの共同科学技術目標、研究、イノベーションを支援するための仕組みをつくることを検討する。
8. 科学的能力が不足している海外のパートナーに科学技術協力支援を提供する仕組みを検討する。
9. 連邦政府の専門家が、国際的な科学技術慣行や米国政府の他部門のネットワークを理解できるよう、科学技術機関の国際事務所間の詳細な情報交換の機会を拡大する。
10. 公的外交、メディア、個人的な人脈を介して既存の国際的科学技術協力の取組みを拡大する。
11. 伝統的黒人大学(HBCUs)、マイノリティ支援機関(MSIs)、EPSCoRプログラム下の機関等、あらゆる教育レベル・カテゴリーでの研修プログラムを支援する。
12. HBCU、MSI、EPSCoR機関のSTEMと非STEM分野の研究者が、国際的な科学技術協力にどのように参加しているかを調査する。
13. 科学技術外交を支援する機関において、技術専門家採用するための新職群創設を検討する。
14. 非科学者意思決定者とコミュニケーションできるよう連邦科学者を動員・訓練する仕組みを作る。
15. 国際的な基準設定機関等に貢献する専門家にインセンティブと研修機会を提供する。
16. 現在の科学技術協力協定の妥当性と欠陥を評価し、適宜、海外のパートナーと共に対処することを検討する。

[DW編集局+JSTワシントン事務所]