[本文]

国・地域名:
ドイツ
元記事の言語:
ドイツ語
公開機関:
マックスプランク協会(MPG)
元記事公開日:
2022/10/03
抄訳記事公開日:
2022/11/30

スバンテ・ペーボ氏がノーベル生理学・医学賞を受賞

Nobelpreis 2022 für Svante Pääbo

本文:

(2022年10月3日付、マックスプランク協会(MPG)による標記発表の概要は以下のとおり)

今年のノーベル生理学・医学賞は、スバンテ・ペーボ氏が受賞した。最も重要な業績の1つは、ネアンデルタール人ゲノムの解読である。MPG会長のマルティン・シュトラートマンは、「彼の研究は、現生人類の進化史に関する我々の理解に革命をもたらした」と述べた。例えば、ペーボ氏は、ネアンデルタール人や他の絶滅したヒト科の動物が、今日の人類の起源に多大な影響を及ぼしていることを示したのである。

ペーボ氏は、1990年からミュンヒェン大学の研究室を率い、1997年ライプチッヒに新設されたMPGの進化人類学研究所の5人のディレクターの1人となり、現在に至っている。

1990年代半ばに、ペーボ氏とそのチームは、ネアンデルタール人のミトコンドリアDNAの比較的短い部分の解読に成功した。このネアンデルタール人のDNAは、今日の人間のゲノムとは大きく異なっており、ネアンデルタール人が現生人類の直接の祖先ではないことが証明された。

2000年代初頭、DNA配列決定法が格段に進歩し、彼は、核に存在するネアンデルタール人のゲノム全体の解読に着手した。

2010年、数万年前のネアンデルタール人の骨から、ゲノムの復元に成功した。現生人類とネアンデルタール人のゲノムを比較した結果、現生人類がアフリカを離れてヨーロッパやアジアに到着した約5万年前に、ネアンデルタール人と交配し、子孫を残していたことが明らかになった。

2014年、チームはネアンデルタール人のゲノムをほぼ完全に解読することに成功した。これにより、現代人のゲノムとの比較が可能となった。ペーボ氏は、「ほとんどすべての現代人のゲノムが、約3万箇所においてネアンデルタール人や大型類人猿のゲノムと異なることを発見した。これは、解剖学的な意味において現生人類を「現生人類」たらしめている理由を、遺伝子的に解明するものである。」と述べた。

これに先立つ2012年、彼のチームは、西シベリアのアルタイ山脈のデニソバ洞窟で発見された小さな骨からゲノムを解読した。この謎めいた先史時代の人類は、ネアンデルタール人とは遠く離れており、現在のパプアニューギニアの住民、オーストラリアのアボリジニ、その他のオセアニアの部族のゲノムとは最大で5%の一致があった。

現在、研究者らは、分解され少量しか存在しないDNA断片を復元する新しい方法に取り組んでいる。より古いDNAや、高温多湿の気候のためにDNAが残りにくい地域の遺伝子の研究を可能にすることが目的である。

[DW編集局]