[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)
元記事公開日:
2022/09/29
抄訳記事公開日:
2022/12/01

NASEMによる科学技術における米国の優位性維持のための提言

Maintaining U.S. Global Leadership in Science and Technology Requires Greater Focus on Strengthening Innovation, Not Solely on Restricting Access to Specific Technologies

本文:

(2022年9月29日付、全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)による標記発表の概要は以下のとおり)

科学技術における米国の世界的リーダーシップを維持するために、連邦政府は、これまでの特定技術ごとに競争相手からのアクセスを防止する方法から、米国のイノベーション能力を保護するリスク管理アプローチに移行すべきである。それには、米国は開かれた研究環境で適切に遂行できる仕事の量を最大化するよう努めるべきであり、これにより米国のリーダーシップを促進し、優秀な人材を惹きつけ、新しい技術につながる発見を強化することになる。しかし、すべての研究関連業務がオープンな環境に適しているわけではなく、米国の国益にとって戦略的に重要な脅威や脆弱性を特定・評価し、それらのリスクを管理するための戦略を策定し、その戦略の実行を監督するための省庁間プロセスも必要である。

重要技術に関連するリスクを管理しつつ、国家の技術革新能力を強化するために連邦政府が取るべき措置として、以下を推奨する。

①大統領は、大統領令を通じて、基礎研究は引き続き可能な限り制限を受けないことが米国の政策であることを明確にすべきである。また、同大統領令で、大統領府科学技術政策局(OSTP)に対し、連邦政府機関と連携して、120日以内に研究環境の開放と制限の基準を定義するよう指示することを求めるべきである。大統領令は連邦政府機関に対し、助成金や契約の下での作業に適した環境を授与前に明確にし、オープンな研究環境で実施可能な作業の量を最大化する必要がある。
②国立科学財団(NSF)は、イノベーションにおける米国のリーダーシップに必要な科学技術イノベーション人材を育成、惹きつけ、維持するために不可欠な要素を定義する取組みを進め、詳細な報告書を180日以内に作成すべきである。この調査結果に基づき、OSTPは連邦研究機関と連携し、国内の研究人材の育成、国際研究協力の機会拡大、優秀な人材を教育や雇用のために米国に惹きつけ、維持することを目的とした政策・プログラムを通じて、科学技術における米国のリーダーシップを促進する国家戦略を策定する必要がある。
③国家安全保障会議(NSC)、国家科学技術会議(NSTC)、国家経済会議(NEC)は、米国技術的リーダーシップやその他の国益にとって、戦略的に重要な脅威や脆弱性を特定・評価するための省庁間プロセスの開発を主導すべきである。各脅威について、このプロセスでは、結果として生じるリスクに対処するために連邦機関が使用する関連リスク管理戦略および評価基準を策定する必要がある。このリスク管理戦略の実行の際には、「政府全体」の取り組みとするために、上記の省庁間プロセスによって調整され、監督される必要がある。
④NSTC、NSC、NECは、戦略的に重要なプラットフォームの特定と、その開発、管理、使用を対象とする協調的リスク管理戦略の開発のための新しい政策枠組みを共同で作るべきである。

[DW編集局+JSTワシントン事務所]