[本文]

国・地域名:
英国
元記事の言語:
英語
公開機関:
英国王立協会
元記事公開日:
2022/10/19
抄訳記事公開日:
2022/12/15

CO2の地中貯留技術開発の最新状況

Locked away: geological carbon storage

本文:

(2022年10月19日付、英王立協会の標記発表の概要は以下のとおり)

地球温暖化を1.5℃未満に抑えるには、2050年までに、数千年にもわたって何百万トンものCO2を地中に閉じ込めるための貯留井が、何千個も必要になる。この報告書は、CO2の貯留に関連する実用性と課題に関する最新のエビデンスの概要を示している。

■炭素の地中貯留とは

CO2は、工場などの発生源または空気から直接回収し、圧縮して地表から1~2.5kmの深さの岩盤に注入し、何千年もの間、安全に閉じ込めることができる。この貯留層は通常、不浸透性岩の上層・下層と浸透性岩層のサンドイッチで構成され、CO2の流出を防いでいる。

■炭素地中貯留の課題

貯留可能な場所の地質はそれぞれ異なるため、以下の点について、各所の特徴を把握する必要がある。
・CO2を注入できる量と速度
・CO2の岩盤内挙動
・潜在的な漏出経路の存在
其々の場所が開発されるにつれて、監視、保証、貯留の最適化に関連するさまざまな課題が生じるが、各所の効率最大化のためには克服する必要がある。

■炭素回収・貯留(CCS)の安全性

CO2が貯留層から漏れる可能性は低く、適切に調整された貯留井は、1万年以上にわたってCO2の98%を保持すると推定されている。CO2を安全に圧入するための対策は、以下のとおり:
・CO2を封じ込めている岩盤の破砕を避けるため、場所固有の地質に適した速度で注入する。
・圧力解放井を使用して地下の圧力を低減する。
・漏れを検出、修復するために、継続的な監視を行う。

■炭素地中貯留の今後

CCSは、ネットゼロを達成するために必須の手法である。CO2貯留産業が発展するにつれて、CO2移行挙動予測の向上、貯留層の監視技術、貯留システムの容量拡大において、継続的な進歩が見られることになる。これらの進歩はすべて、CO2貯留の効率向上や、新たなCCS設置増加につながる。

さらに、CO2と鉱物との反応を利用した炭素貯蔵など、新たな貯蔵技術も出現しており、それによって地質学的にCCSが可能な場所の数も劇的に増える可能性がある。

世界的な気候変動対策の目標を達成するには、2050年までに毎年最大400の新たなCO2貯留井が必要になると予測されている。これには、基礎的かつ継続的な研究に加えて、低炭素社会の実現に向けた、CCSを安全かつ効果的に行うための適切な政策と規制環境の構築が必要である。

[DW編集局]