[本文]

国・地域名:
ドイツ
元記事の言語:
ドイツ語
公開機関:
マックスプランク協会(MPG)
元記事公開日:
2022/11/09
抄訳記事公開日:
2023/01/16

マックス・プランクのスタートアップが高効率バッテリーを開発

Max-Planck-Startup entwickelt effizientere Batterien

本文:

(2022年11月9日付、マックス・プランク協会(MPG)による標記発表の概要は以下のとおり)

MPGの医学研究所(Max Planck Institute for Medical Research)による発明が、バッテリーを大幅に軽量化し、効率、安全性を高める可能性がある。同研究所は、バッテリーの集電体として機能し、それらをより強力にすることができる非常に微細な金属フリースを作成する方法を発見した。研究所のスピンオフ企業であるBatene GmbHが、技術移転組織であるマックス・プランク・イノベーションを通じて技術ライセンスを受け、現在マーケティングを行っている。このスタートアップは、初期資金調達として1,000万ユーロを受ける。

Bateneの社長であるマルティン・メェラー(Martin Möller)氏は「金属フリースにより、高エネルギー密度、高速充電、長ランタイム、長寿命などの特性を備えた軽量バッテリーが実現できる」と述べている。リチウムイオンは、層の厚さが0.2mm未満でのみ良好に機能する。したがって個々のセルは、非常に薄く、大量の材料と積み重ねることが必要であるが、本発明は、この課題に対する驚くほどの簡単なソリューションを提供できる。

■アモルファス金属繊維により、より厚いセルを実現

今回の開発の中心は、MPG医学研究所の所長であるヨアヒム・シュパーツ(Joachim Spatz)氏が開発した、非常に微細な金属繊維を製造するプロセスである。非常に優れた導電性を有するアモルファス金属繊維は、緻密な導電性の金属メッシュに加工され、アノードとカソードのそれぞれの活物質で満たされている。このような電極により、電池セルの厚みを2mm以上、つまり現在の通常セルの10倍に増やすことができる。セルが厚いほどバッテリー内の活物質以外の材料の割合が大幅に減少する。今日、エネルギー貯蔵に必要な活物質は、重量比でわずか60%程度であるが、この新たな設計方式により、金属含有率が10分の1に減少し、電池の総重量に占める活物質の割合が90%以上に増加する。

金属フリースは従来の集電体に比較して著しく大きな表面積を有するので、そのような集電体を用いた電池は、はるかに速く充放電することができる。さらに金属メッシュは、電極の電気抵抗を減らし、電極の機械的安定性を高め、バッテリーをより安全にする。超微細金属フリース電極の使用は、今日確立されているリチウムイオン電池に限定されないため、現在開発中のリチウム金属電池や全固体電池、ナトリウムイオン電池など、次世代の電池にも大きな可能性があると考えられる。

■さらなる技術開発

Bteneは、実証実験によりこの技術が非常の強力であることを確認し、実用的であることを証明した。今後は、メタルフリースを用いた電極の生産能力を増強し、さらなる技術開発を進めていく。

マックス・プランク・イノベーションの特許およびライセンスマネージャーであるベルント・クトアテッカ(Bernd Ctortecka)氏は「バッテリーの需要は今後数年間さらに力強く伸び続けることが予想されることから、Bateneの新技術は、大きな経済的可能性を秘めている。バッテリー・メーカーは、より効率的な新技術を探し求めている。さらに、この金属不織布は、ろ過、電磁波シールド、触媒など、さまざまな技術分野で利用することができる」と話している。

[DW編集局]