[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)
元記事公開日:
2022/11/29
抄訳記事公開日:
2023/01/23

NASEMがSDGsの実現を加速させるための行動に関する報告書を発表

New Report Identifies Action Steps and Research to Accelerate Progress on Sustainable Development Goals

本文:

(2022年11月29日付、全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)の標記発表の概要は以下のとおり)

全米科学・工学・医学アカデミー(National Academies of Sciences, Engineering, and Medicine:NASEM)が発表した新たな報告書は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)を推進するために政府、非政府組織、慈善団体、大学、民間企業が取り得る行動を特定した。世界は2030年までにSDGsを達成するとした当初の目標の達成に向けた軌道に乗っておらず、関係者がSDGsの運用についての共通の理解を持っていないことが主な課題であり、また米国ではSDGsの認知度が低い、と同報告書は述べている。

報告書では、SDGsの運用を支援するために、優先すべき研究領域を、様々な関係者のための行動ステップとともに以下のように特定している。

教育および能力開発: あらゆる教育機関は、社会全体でSDGsの実現を強力に推進できる立場にある。例えば、大学では、大学の使命に基づいてSDGsのニーズや優先順位を評価する「大学自己評価」を策定し、SDGsの進捗を加速する行動を取ることができる。

SDGsのローカリゼーションと伝統的知識のネットワーク: SDGsはグローバルな活動である一方で、地域社会の賛同と実践に根ざすものでなければならない。地域のリーダー、実務家、慈善団体は、先進的な持続可能性に向けて先住民の知識を効果的に取り入れる方法など、事例研究や知識ネットワークから学ぶことができる。

食料システム: 現在の食料システムは、世界の温室効果ガス排出量の3分の1、世界の水使用量の70パーセントの原因となっている。また、現在の価格高騰やサプライチェーンの混乱が起こる以前の2020年時点で、既に世界人口の約30%が十分な食料を入手できない状況にあった。これらの問題に対処し、SDGsを達成可能なものとするには、食料システム内のさまざまな連携についての全体的な改革が必要である。

都市化: 地域レベルのデータ収集と報告のシステムを改善し、地域機関等が作成したデータセットから情報を取得するためのオープンデータハブを作成するなど、都市化に関連するSDGsには、相乗効果を生む機会が多く存在する。

脱炭素化: すべての分野で二酸化炭素純排出量を削減し、ゼロカーボンエネルギーに移行することに加え、有機・無機両方の二酸化炭素除去(carbon dioxide removal:CDR)が、地球温暖化を最小限に抑えることになる。このため、大規模なスケールアップ、投資、および海洋・自然をベースとしたCDRの基礎科学を実証するための研究が必要である。例えば、再生可能エネルギーや原子力などのゼロカーボンエネルギーへの移行、エネルギーシステム全体の効率化、循環・充足型のライフスタイルの検討などである。

SDGsのための科学・技術・イノベーション(STI):  STI協力を含む分野を超えたパートナーシップは、SDGsを推進するための革新的なアプローチに希望を与えている。こうした研究により、SDGsの現状や、経済危機、COVID-19パンデミック、ウクライナでの戦争などの状況の中で、STIがどのようにSDGsの達成を促進できるかについて精査することもできる。

科学と平和: 紛争はすべてのSDGsの達成を損なうとし、SDGsのデータハブ、パートナーシップ、暴力の監視と対応措置のためのデータを強化する必要があると指摘している。

SDGs達成のための資金調達: SDGs関連の投資が有形無形の利益を実現する。地域ごとのイニシアテチブは、民間投資を誘致し、資金調達を容易する可能性がある。

[DW編集局]