（2022年12月7日付、欧州委員会の標記発表の概要は以下のとおり）

欧州委員会は本日、EUの博士課程・ポスドク教育のための、 Horizon Europe下の主要助成プログラムであるマリーキュリー・アクション（MSCA）における、研究者の教育・スキル・キャリア開発を支援する新規公募を発表した。MSCAは、2021～2027年に総額66億ユーロの予算を投じて、世界中の研究者をあらゆるキャリアの段階、あらゆる分野において支援する。また、研究機関の優れた博士課程・ポスドク課程のプログラム、共同研究やイノベーション・プロジェクトを支援し、国際的な魅力と認知度を高め、大企業や中小企業を含む学界を超えた協力を促進することによっても、研究機関にも利益をもたらす。

MSCAは、2023年に8億8,600万ユーロ超、2024年には9億200万ユーロ超の資金を提供し、ワークプログラムの以下の5大施策をカバーする。

・MSCA 博士課程ネットワーク
産業界や企業など、学界やその他の分野で博士候補を育成するプログラムを実施する。2023年と2024年の公募は、それぞれ4億3,480万ユーロと4億5,120万ユーロの予算で、各年5月に開始され、11月に終了する。

・MSCA ポスドク・フェローシップ
博士号を取得後、高度なトレーニングと国際的・学際的・分野間の移動を通じて、新たなスキルを習得したいと考えている研究者の創造性や革新性を高める。この助成は、非学術分野を含む欧州および世界中で最先端の研究・イノベーション・プロジェクトを追求する用意ができている研究者に提供される。2023年と2024年の公募は、それぞれ2億6,050万ユーロと2億7,080万ユーロの予算で、毎年4月に開始され、9 月に終了する。

・MSCA スタッフ交流
スタッフの交流を通じて、研究・イノベーションにおける国際的、学際的、分野間の持続可能なコラボレーションを発展させる。この制度は、アイデアを革新的な製品、サービス、プロセスに変えるのに役立つ。2023年と2024年の公募は、予算がそれぞれ7,850万ユーロと8,120万ユーロで、毎年10月に開始され、2 月下旬または 3 月上旬に終了する。

・MSCA 共同ファンド
MSCAのベストプラクティスを広める目的で、EU 加盟国またはHorizon Europe準参加国における新規または既存の博士課程およびポスドク・フェローシップ制度に共同出資する。これには、国際的・学際的・分野間の研究教育、ならびにキャリアのあらゆる段階における研究者の国際的・分野横断的な移動が含まれる。2023年と2024年の公募は、それぞれ9,660万ユーロと9,930万ユーロの予算で、毎年10月に開始され、2月に終了する。

・MSCA と市民
主としてEuropean Researchers’ NightおよびResearchers at Schoolを通じて、学生、家族、一般大衆に研究を身近にするものである。本施策により、研究者の仕事が市民の生活、社会、経済に与える影響についての認識を高め、科学と研究に対する一般の認識を高める。また、研究や科学的キャリアに対する若者の関心を高める狙いもある。2023年の公募は1,540万ユーロの予算で、2024年版と2025年版の European Researchers’ Nightをカバーし、2023年6月20日に開始され、10月25日が締め切りである。

新規ワークプログラムの下では、MSCA プロジェクト間のテーマの関連性を強化し、主要な EU 政策優先課題への貢献の認知度を高め、プログラムの効果を最大化する方法について関係者のフィードバックを収集するため、「政策へのフィードバック」の取り組みにも資金が提供される。

■背景

1990 年に開始され、1996 年にMarie Curie Actionsと改称された本プログラムは、研究者に新たな知識とスキルを与え、国際的および分野横断的な経験を提供して明日のトップ研究職を満たすことにより、研究の卓越性、雇用・成長・投資の促進に貢献する。これらは、「欧州研究領域」（ERA）および世界中で、卓越性の広域拡大を図り、質の高い研究者教育・専門教育の基準を設定することにより、高等教育機関のほか学界を超えたその他の組織に構造的な影響を与える。

2014 年以降、本プログラムは、博士号取得候補者25,000人を含む、欧州およびその他の国の66,200人を超える研究者を支援してきた。また、1,180の国際博士課程プログラムに資金提供を行い、5,100を超える企業と 2,650の中小企業が関与する学界・産業界の連携を強化した。同じ期間に、130か国以上から8,700を超える組織がMSCAに参加した。

[DW編集局]