[本文]

国・地域名:
EU
元記事の言語:
英語
公開機関:
欧州委員会(EC)
元記事公開日:
2022/12/05
抄訳記事公開日:
2023/01/27

EU-米国貿易技術評議会が、共通の課題に対処し、世界的危機に対応

EU-US Trade and Technology Council addresses common challenges and responds to global crises

本文:

(2022年12月5日付、欧州委員会の標記発表の概要は以下のとおり)

本日、EUと米国は、米国メリーランド州で貿易技術評議会(TTC)の第3回閣僚会議を開催した。
TTC は、大西洋を越えた協力を深めて貿易を促進し、技術と安全保障に関する世界標準を策定するための重要なフォーラムである。ウクライナに対するロシアのいわれのない侵略戦争を含む地政学的挑戦により、TTCの下での緊密な調整の重要性を一層増している。

双方は、インフレ抑制法に関するEU-米国タスクフォースの作業を評価し、そこでEUは、特に差別的条項と歪曲的な補助金に関連する強い懸念を改めて表明した。TTCは、暫定的な進捗に言及し、EUは、米国がその懸念に建設的に対処することを期待していると述べた。

閣僚会議の主な成果は以下のとおり:

◆デジタル・インフラと接続性

現在の緊迫した地政学的環境では、重要なインターネット・インフラのリスクが増大している。EU と米国は、戦略的な陸上・海底ケーブルなどのインフラの強靭性を強化するプロジェクトを促進する。両国はまた、パートナー諸国における安全で強靱なデジタル接続も支援している。最初のステップとして、ジャマイカの1,000を超える公立学校と児童養護施設が接続され、ケニアにおいても同様のプロジェクトが政府と協力して展開され、遠隔地の学校との光ファイバー接続が構築される。

◆新興技術に関する協力

EUと米国は、新興技術に対して同じアプローチを共有しており、信頼できる人工知能(AI)のための共通ツールと標準を開発するため、共同ロードマップに合意した。両者は、ポスト量子暗号やモノのインターネット(IoT)のサイバーセキュリティなどの重要な領域で共同規格に取り組む。また、EU と米国は、貿易を促進し、大西洋を越えた交流における障害に対処するため、量子研究開発で協力する。

電気自動車の普及を促進するため、EUと米国は、2024 年までに大型車両向けのメガワット充電システムに関する共通の国際標準の策定を目指す。また、2023年に公共の電気自動車充電インフラに関する勧告を提出する予定である。

◆強靱な半導体サプライチェーンの構築

ロシアのウクライナに対する侵略は、世界のサプライチェーンに重大な圧力をかけている。今回、EU と米国は 2つの協定に署名した。1つは、半導体サプライチェーンの混乱に協力して対処し、緩和するための早期警戒メカニズム、もう1つは、補助金競争を回避するために、半導体補助金の相互透明性をかつてないレベルに高めるコミットメント、に関するものである。

◆我々の価値観を世界に広め、パートナーに手を差し伸べる

EUと米国は、「EU-米国の未来のインターネットに関する宣言(Declaration for the Future of the Internet. of the EU and US)」に反映されているように、オープンで、自由で、グローバルで、相互運用性があり、信頼性が高く、安全なインターネットを通じて、その価値を世界に広めている。EU と米国は、オンラインで人権擁護者を保護することに関する共同声明を採択し、「政府によるインターネット切断が市民に与える影響」を調査する任務を負った専門家グループの最初の報告書を提出した。

双方は、気候変動や異常気象の予測、保健、スマート農業の分野における主要な課題に対処するため、AIモデルやコンピューティングパワーなどのデジタルリソースをプールし、これらの公共財をパートナー国が利用できるよう協力することに合意した。

◆持続可能な貿易に向けた大西洋横断的作業の強化

EUと米国は、「持続可能な貿易に関する大西洋横断イニシアチブ」を立ち上げることに合意した。このイニシアチブは、低炭素経済への移行を支援し、「グリーン」な商品やサービスの貿易と投資を増やすことを目指して、TTC全体にわたる作業を強化する。双方は、エネルギー集約型産業の脱炭素化や、より循環的なネットゼロ経済への移行に不可欠な商品やサービスの普及を促進できる可能性がある協力分野を模索する。

◆輸出管理と投資審査による安全保障の強化

TTCにおける協力は、ロシアに対する先進技術の輸出規制の迅速かつ協調的な展開に役立ってきた。EU と米国は、特に情報共有に関して、この分野でのさらなる協力に合意した。機密性の高い技術への特定の投資によってもたらされる安全保障上のリスクに焦点を当てた投資審査に関する議論が続けられている。両者はまた、非市場経済的な政策や慣行に対処するために使用できる政策ツールの調査、ならびに経済的威圧への共同対処の可能性の調査を行うことにも合意した。

◆大西洋横断貿易のさらなる拡大

大西洋横断貿易は、世界最大の二国間貿易関係であり、年間貿易額は1兆ユーロを超え、双方の経済に多大な利益をもたらしている。閣僚らは、「舶用機器に関する相互承認協定(MRA)」の延長と、MRAの医薬品(ワクチン)への拡大により、大西洋横断貿易のさらなる成長を支援することに合意した。さらに、閣僚らは、機械分野での議論を皮切りに、適合性評価に関する取り組みを始めることを支持した。

双方はまた、デジタル化を活用して大西洋横断貿易を容易にすることも検討する。閣僚らは、既存のMRAをデジタル化し、その魅力を高めるという考えを支持した。双方は、貿易関連のお役所仕事を削減するための、デジタルツール・イニシアチブに関するパイロット・プロジェクトに取り組む。

◆デジタル移行に向けた人材育成

デジタルスキルと人材の育成は、デジタル移行の重要な柱である。EUと米国は、官民の教育訓練機関のリーダーを集めた「Digital Skills and Jobs Coalition(DSJC)」のような、「成長のための人材(Talent for Growth Task Force)タスクフォース」を立ち上げる予定である。

[DW編集局]