[本文]

国・地域名:
EU
元記事の言語:
英語
公開機関:
欧州委員会(EC)
元記事公開日:
2022/12/13
抄訳記事公開日:
2023/02/03

EU産業界の研究開発投資が再び増加

Industrial investments in research and development in the EU again on the rise

本文:

(2022年12月13日付、欧州委員会の標記発表の概要は以下のとおり)

欧州委員会がこのほど発表した2022年版の「EU産業研究開発投資スコアボード」によると、欧州産業界の研究開発投資は、2020年はパンデミックの影響でマイナス2.2%であったのに対して、2021年には8.9%の増加となり、再び軌道に戻ったことを示している。

EUは、自動車分野の研究開発投資において引き続き世界的なリーダーであり、また既存企業と新興企業の双方において、電動化とデジタル化への移行が全面的に進行している。スコアボードはまた、研究開発投資が情報通信技術(ICT)に高度に集中している米国と比較して、EUでは幅広い分野に多様化していることを示している。

世界的に見ると、民間部門の研究開発投資は、パンデミック前のレベルを超えて大幅に増加した(2021年は前年比14.8%増)。2004年のスコアボード発行以降初めて、世界の上位2,500社の研究開発投資総額が1兆ユーロを超えた(1兆940億ユーロ)。一つの重要な変化は、世界の合計に占める中国のスコアボード企業のシェアが17.9%となり、EU企業(17.6%)よりもわずかに大きくなったことである。また米国企業のシェアは、世界の40.2%に増加した。

◆グローバルな技術競争のさらなる激化

スコアボードでは、企業の研究開発の4分の3以上を占める主要4分野における世界的な技術競争が激化していることが示されている。ICT製造業(22.6%)、医療産業(21.5%)、ICTサービス(19.8%)、自動車(13.9%)の4分野である。

米国企業と中国企業の研究開発投資の増加率(それぞれ16.5%と24.9%)は、引き続きEU企業を上回っている。これは、米国のスコアボード企業が ICT(製造業とサービス業の両方)と医療の研究開発投資において世界をリードしており、一方、中国のスコアボード企業は、ICT製造業のみならず、ICTサービスにおいてもEUを上回っているためである。また中国のスコアボード企業の数は、2011年には176社だったのが2021年には678社と、10年間で3倍以上に増加し、伝統的な製造業においてEUと日本の企業に取って代わっている。

◆心強い傾向と今後の政策

多くのEU加盟国は、自動車、ICT、医療産業に加えて、航空宇宙、防衛、化学産業などの分野で有力な研究開発企業を抱えている。EUの上位1,000社の中には、2021年に大きく研究開発投資を増やした医療および ICT 分野の中小企業(SMEs)が多数含まれている。これは、「新欧州イノベーションアジェンダ」の重要なターゲットグループにとって歓迎すべきシグナルである。このアジェンダは、欧州イノベーション会議の支援を受けて、新興のディープテックやブレークスルー技術のスケールアップと成長を支援し、分野間の波及効果を誘起するものである。また更新された「欧州新産業戦略」は、ハイテク分野を含む欧州の幅広い産業基盤におけるイノベーション政策を推進している。

グリーン技術と循環型経済におけるスコアボード企業の特許ベースの位置付けについては、EUと米国の企業が高価値の特許でリードしており、EUは循環型社会に関連する発明でリードしていることも示している。

今回の報告では、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の達成状況も分析している。EUの企業は、ほとんどのSDGsで最高のスコアを獲得し、昨年からの進歩を示した。分野別の観点では、自動車および化学分野の企業が、SDGsにおいて平均して高い進捗を達成した。この報告はまた、ディープテックによるグローバル課題の解決の可能性の高さを明らかにしている。

◆コーポレート・ベンチャーキャピタル

企業のイノベーション戦略の新たな側面として、コーポレート・ベンチャーキャピタル(CVC)も分析されている。CVCは、過去20年間で増加し続けており、現在ではスコアボード企業の3分の2が活用している。研究開発投資とCVCとは、特にICTと医療の分野で、相互に補完し、支え合っている。EU企業のCVCは、米国企業のそれの約半分に上る。さらに、EU企業からの資金の80%は、米国のスタートアップに向けられており、これが大きな波及効果を及ぼしている。

[DW編集局]