[本文]

国・地域名:
EU
元記事の言語:
英語
公開機関:
欧州委員会(EC)
元記事公開日:
2023/02/21
抄訳記事公開日:
2023/03/24

EUの漁業・水産養殖部門の持続可能性・強靭性の改善施策

Fisheries, aquaculture and marine ecosystems: transition to clean energy and ecosystem protection for more sustainability and resilience

本文:

(2023年2月21日付、欧州委員会の標記発表の概要は以下のとおり)

欧州委員会は本日、EUの漁業・水産養殖業の持続可能性と強靭性の改善に関する一連の施策を発表した。これには、次の4つが含まれている。

・EUの漁業・水産養殖部門のエネルギー移行に関する政策文書
・持続可能で強靭な漁業のための海洋生態系の保護と回復のための行動計画
・現在と未来の共通漁業政策に関する通知
・漁業・水産養殖製品の共同市場機構(Common Market Organisation)に関する報告

この施策の主な目的は、よりクリーンなエネルギー源の使用を促進し、化石燃料への依存を減らし、これらの分野による海洋生態系への影響を軽減することである。

■ 2050年までに漁業・水産養殖部門の排出をネットゼロにする

欧州委員会は、2050年までにEUで気候中立を達成するという欧州グリーンディールの目標の1つに沿って、化石燃料への依存を減らし、気候中立な漁業・水産養殖部門を目指すことを提案している。そのため、燃料効率の改善や再生可能な低炭素電源への切り替えなど、同部門のエネルギー移行を加速するための支援策を提案している。

重要な施策の1つは、「EU漁業・水産養殖におけるエネルギー移行パートナーシップ(Energy Transition Partnership for EU Fisheries and Aquaculture.)」である。これは、漁業、水産養殖、造船、港湾、エネルギー、NGO、国および地域当局など、すべての関係者が結集して、同部門のエネルギー移行の課題に全体的に対処するものである。

欧州委員会はまた、研究・イノベーションから実用化に至るまでの技術移転における不備の解消、労働者のスキル開発の促進、資金支援の機会や周知といったビジネス環境の改善などにも取り組む。

■ 持続可能な漁業に向けた海洋生態系の保護

欧州委員会は、EUの環境目標に対する共通漁業政策(Common Fisheries Policy:CFP)の貢献を強化し、特に海底擾乱、影響を受けやすい種の混獲、海洋食物網への影響など、漁業活動が海洋生態系に与える悪影響を軽減するための海洋行動計画を提示している。

この行動計画は、「欧州生物多様性戦略2030(EU Biodiversity Strategy for 2030)」と、海の30%を法的かつ効果的に保護し、3分の1は厳格に保護するという公約の実現に貢献するものである。この目標を達成するため、欧州委員会は加盟国に対し、明確な期限を定めて、海洋保護区域(MPA)を効果的に保護・管理するための漁業保護措置を講じるよう求めている。これらの取り組みには、魚の産卵・生育場所の保護、魚の死亡率の低源、影響を受けやすい種や生息地の中核となる領域の復元が含まれる必要がある。

この計画は、漁業による海底への影響を軽減することも目的としている。欧州委員会は、加盟国に対し、遅くとも2030年までにすべてのMPAで移動式底引き網漁(mobile bottom fishing)を廃止し、新たに設定されるMPAでは許可しないようにするための共同勧告を提案し、国内措置を講じるよう求めている。

行動計画はまた、漁具と漁業慣行の選択性を高め、絶滅危惧種の偶発的な捕獲を減らすための施策を提案している。

今回の行動計画は、最近合意された「昆明・モントリオール生物多様性協定」の実施に向けたEUの貢献の一部をなすものでもある。

■ 共通漁業政策(CFP)の実施を支援する「漁業と海洋に関する協定」(Pact for Fisheries and Oceans)

欧州委員会は、漁業・水産養殖部門の将来に向けた統一されたビジョンを確立し、CFPを完全に実施するという共同コミットメントを再確認し、漁業管理者と利害関係者の間で社会的・環境的強靭性の両面から政策の将来性についての議論を開始するため、すべての利害関係者を結集する「漁業と海洋に関する協定」を提案している。

[DW編集局]