（2023年3月10日付、欧州委員会の標記発表によると、欧州委員会と上級代表は、安全保障・防衛に関する欧州宇宙戦略について初めての共同発表を行った。発表の概要は以下のとおり）

勢力争いの拡大と脅威の激化という現在の地政学的状況において、EUは宇宙資産の保護、権益の防衛、宇宙における敵対的活動の抑止、戦略的態勢と自律性の強化のために、行動を起こしている。

本戦略は、1年足らず前に採択された「EU戦略的コンパス（EU Strategic Compass）」を直接実装したものであり、宇宙を、サイバーおよび海洋とともに、安全保障の確保が必須の戦略的競争領域として定義したものである。本戦略は、次のような行動を規定している。

■ 宇宙空間の脅威に関する理解の共有

本戦略は、宇宙領域に関する共通の定義に基づいて、宇宙システムとその地上インフラを危険にさらす対宇宙能力と主な脅威の概要を示している。加盟国全体で脅威に関する共通理解を高めるため、上級代表は、加盟国の情報を活用して、EUレベルで毎年、機密の宇宙脅威の状況分析を行う予定である。

■ EUにおける宇宙システム・サービスの強靭化と保護

本戦略は、EUにおける宇宙システムとサービスの強靭化と保護の強化策を提案している。この目的のために、欧州委員会は次のことを実行する。

・EU全体で一貫したアプローチを保証する、宇宙の安全保障、安全性、持続可能性のための共通枠組みを提供する「EU宇宙法（EU Space Law）」の提案を検討する。
・情報共有・分析センター（ISAC）を設立して、官民の関連機関の間で、宇宙能力の強靭化対策に関する認識を高め、ベスト・プラクティスの交換を促進する。
・EUの長期的な宇宙への自律的アクセスを確保するための準備作業を開始し、特に安全保障と防衛のニーズに対処する。
・欧州防衛機構および欧州宇宙機関と緊密に連携して、戦略的依存を減らし、宇宙および防衛向けの供給の安全を確保することにより、EUの技術的主権を強化する。

■ 宇宙の脅威への対応

本戦略は、関連するEUのツールを動員して宇宙の脅威に対応するための具体的な方策を概説している。
・「ガリレオ」の保護に現在使用されている既存の宇宙脅威対応メカニズムを、EU 内のすべての宇宙システムとサービスに拡大する。
・軌道上での不適切な行動を特定し、EUの資産を保護するため、関連する各国の宇宙司令部を通じて宇宙領域の認識情報にアクセスすることで、宇宙物体をより適切に検出および識別する。
・パートナーとの共同作業を含め、宇宙演習を実施し、宇宙の脅威に対するEUの対応のさらなる試験・展開を図り、連帯のメカニズムを探る。

■ 安全保障と防衛のための宇宙利用

本戦略は、安全保障と防衛のために宇宙を最大限に活用することを提案している。デュアルユースサービスの展開に当たっては、EU宇宙プログラムの進化を準備する際に、防衛上の要件を考慮する必要がある。本戦略で、以下のことを提案している：
・2件のパイロットプロジェクトを立ち上げる。1件は、加盟国の能力に応じた最初の宇宙領域認識サービスの提供をテストするためのもので、もう1件は、「コペルニクス」の進化の一環として、新たな政府による地球観測サービスをテストするためのものである。
・宇宙、防衛、安全保障をEUレベルでより適切に結び付け、特に研究開発の観点から相乗効果と相互交流を確保する。
・宇宙と防衛に関わるスタートアップ企業間の協同作業を促進するための具体的な方策を提案する。
・安全保障と防衛向けの宇宙サービスの開発に関連するスキルを強化する。

■ 宇宙での責任ある行動のための提携

EUは、多国間フォーラムへの関与を強化し、具体的かつ実用的な措置を通じて、宇宙空間における責任ある行動の規範、規則、原則を促進する。

[DW編集局]