[本文]

国・地域名:
フランス
元記事の言語:
フランス語
公開機関:
会計検査院
元記事公開日:
2023/04/03
抄訳記事公開日:
2023/04/05

AI戦略は「効果が定かでない」 会計検査院が報告書公表

La stratégie nationale de recherche en intelligence artificielle

本文:

 フランス会計検査院は3日、フランス政府が2018~22年に推進した、いわゆる第1期の「AI国家戦略」について「効果が定かではない」などと評価し、7項目の提言を盛り込んだ報告書を公表した。

 政府はこれまで、AI分野への投資を「研究」「高等教育」「公務の変革」「経済活動への実装」「防衛・安全保障」の5分野に分け、第1期戦略のもと、22年までの5年間で計約15億2,700万ユーロを投じてきた。

 報告書は「フランスは国家戦略のもとでAIへの投資を最も早く始めた国の一つ」「国家戦略がなければ、わが国の地位低下を招いていたかもしれない」などと評価。一方で第1期戦略と同時期に世界47か国で発表されたAIの研究成果の数について「フランスはかろうじて世界10位、欧州で2位につけている」ことなどを指摘し、「地位向上のための効果が定かではない」とした。

 また報告書は、AIに特化した国内4か所の認証研究拠点「トロアジーアー」にも言及。パリ=サクレー大学やソルボンヌ大学などにある主要拠点とは異なる基準で採択されていることに触れ、「トロアジーアーとそれ以外の拠点では役割の明確化が必要だ」とした。

 さらにエコシステム形成の基盤についても、公的研究機関に依拠しがちなフランスと、大学施設や領域横断的な研究拠点を活用して効果を発揮するドイツとを比較し、「ガバナンスや戦略推進のあり方を最適化することが急務だ」と指摘した。

 そのうえで報告書は、
 ▽AI関連の政策を予算書で解きほぐし、効果を検証できるようにすること、
 ▽「トロアジーアー」とそれ以外の研究拠点、それぞれの役割を明確にすること、
 ▽AI政策で優先的に掲げる目標や指標を確立し、国全体で共有すること、
 ▽戦略の遂行などを検証する委員会を国立情報科学・自動化研究所(INRIA)に設けること、
 ▽現代にふさわしいAI教育の道筋を立て、共通の標章によってその可視化と拡大ができるようにすること、
 ▽派生的に生じるAI教育者養成のニーズを予測すること、
 ▽AI研究が環境に与える影響を定義・検証するための実用的な手引き、チェックリストを検討すること、
――以上7項目を、政府とINRIAに提言した。

 政府はすでに22年から「加速戦略」と呼ばれる第2期の戦略に着手。国際的な競争力強化やAI立国としての求心力向上を目指し、25年までにさらに約15億ユーロを投じる予定だが、今回の評価や提言が「加速戦略」の推進にどのように反映されるかが注目される。

[DW編集局]