[本文]

国・地域名:
フランス
元記事の言語:
フランス語
公開機関:
首相府
元記事公開日:
2023/03/30
抄訳記事公開日:
2023/04/11

量子戦略開始2年 政府「主なカードそろった」

France 2030 : Des résultats concrets pour les 2 ans de la stratégie quantique

本文:

 フランス政府は3月30日、発表から2年が経過した「量子技術国家戦略」の実施状況や成果を発表した。量子技術の関係分野には、政府目標額の半分以上が投資されたとし、「高い競争力を持つ国として世界で存在感を示すための主なカードはそろっている」としている。

 この国家戦略は、2021年1月にマクロン大統領が発表。25年までの4年間に政府として約10億ユーロ、民間資本も合わせると約18億ユーロの投資を見込み、「量子コンピューターの技術開発と導入拡大」「量子センサー技術の完成」「ポスト量子暗号技術の開発」「量子通信技術の発展」「能力ある人材の育成」などの主要目標を掲げている。

 現時点での投資状況は、▽5か年投融資計画「フランス2030」の枠組みで3億5,000万ユーロ、▽同計画の一環である「優先研究プログラム」(PEPR)の「量子編」として1億5,000万ユーロ、▽「将来の能力・人材育成」プログラムによる教育として6,000万ユーロ、▽ハイブリッド量子コンピューターのプラットフォーム整備で7,230万ユーロ、▽重要産業分野の支援として8,000万ユーロ――という。

 このうちPEPR「量子編」については、国立科学研究センター(CNRS)、原子力・代替エネルギー庁(CEA)、国立情報科学・自動化研究所(INRIA)の3機関を拠点とし、ハイブリッド量子コンピューターのプラットフォーム「HQI」(France Hybrid HPC Quantum Initiative)が作られるなどした。10件のプロジェクトが採択され、500本を超える論文が関係コミュニティーから発表された。

 また研究機関内や企業内で発展途上段階にある技術の開発支援も行われている。「フランス2030」の枠内では、例えば、▽PASQAL(中性子量子コンピューターの開発)、▽Siquance(半導体技術と欧州チップスの技術にもとづくコンピューターの開発・商用化。CNRSとCEAから派生)、▽Alice & Bob(誤り耐性量子コンピューターの開発。政府の公募による起業支援策「i-PhD」と「i-Lab」に採択)、▽Aqemia(量子メカニズムのアルゴリズム開発を目的とした人工知能を、創薬研究に特化して応用する研究。高等師範学校とCNRSが実施)――などのプロジェクトがある。

 さらに22年7月5日には、CNRS、リモージュ大学、米国立標準技術研究所(NIST)が、特許利用に関する契約を締結。NISTが指定する耐量子コンピューター暗号(PQC)にもとづく暗号化規格を使う場合、CNRSの特許ファミリーにおいては特別なライセンスが必要なくなった。

[DW編集局]