[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)
元記事公開日:
2023/03/29
抄訳記事公開日:
2023/05/08

NASEM、国家貧困統計における医療費・育児費の算定拡大を勧告

Health Care and Child Care Needs Should Be Elevated in the Nation’s Poverty Statistics

本文:

(2023年3月29日付、全米科学・工学・医学アカデミー(National Academies of Sciences, Engineering, and Medicine:NASEM)の標記発表の概要は以下のとおり)

NASEMがこのほど発表した報告書は、補完的貧困指標 (Supplemental Poverty Measure:SPM)の計算に国勢調査局が使用している方法を見直し、家庭のベーシック・ニーズと、それを満たすために利用可能な資産とをより正確に反映すべきと勧告している。

貧困統計は、ベーシック・ニーズが満たされていない人口の規模と構成の把握、困窮の軽減のための資源の絞り込み、福祉改善プログラムの有効性評価に不可欠である。報告書を作成した委員会は、米国経済や基本的生活条件の基準の変化を定期的に評価し、SPMの更新のための勧告を行うことを任務としている。

SPMの計算において国勢調査局は、私的現金収入に現金・非現金の福祉手当を加え、義務的支出を減じて世帯の資産を算定する。一方、貧困の「しきい値」は、食料、シェルター、衣類、光熱、通信などの費用に基づきベーシック・ニーズとして独自に計算される。この「しきい値」を資産が下回った場合、SPMでは貧困と見なされる。現在のSPMにおける資産の算定では、医療と育児を義務的支出としているが、「しきい値」ではそれらを基本必需項目としていない。

本報告書は「しきい値」の範囲を拡大しベーシック・ニーズに医療と育児を含めることを求めている。またシェルター使用経費の算出は地域の基礎住居の賃貸費に基づくべきことも勧告している。

また本報告書は、SPMが貧困を評価する基本的な手法として使われることが認知されていないことから、SPMの現在の名称を、「主要貧困指標(Principal Poverty Measure:PPM)」とすることを提案している。

本報告書による主な勧告は以下のとおり。

▽医療: SPMでは無保険者等のニーズを考慮していないことから、PPMでは「しきい値」の算定に基礎健康保険プランのニーズを、家計の資産の算定に雇用主または政府から給付される健康保険手当を勘案する。また医療関連のべーシック・ニーズ設定では、65歳未満の人々については医療制度改革法(Affordable Care Act)のベンチマークプランを採用し、65歳以上およびメディケアの対象となる65歳未満の人々についてはメディケアアドバンテージプラン(公的医療保険プログラム)の全費用に基づくべきである。

▽育児:育児費用は医療と同様にPPMのべーシック・ニーズに含め、費用は子供の年齢、数、居住場所に基づき算定する。貧困対策において13歳未満の子供がいる世帯の親は被雇用者である親と同様に子供に教育を受けさせられるようにする。一方、育児のために受けた財政支援は家計の資産に加算する。

▽住宅:住宅購入費ではなく賃貸料をべーシック・ニーズとし、その水準は年次公正市場賃料見積(Annual Fair Market Rent Estimates)に基づき算定する。住宅ローンの有無など住宅の保有状況によって区別する現在のやり方を廃止し、ローンなしの場合は負担の差を家計の資産に反映する。また住宅費の地理的な違いを引き続き反映する。

[DW編集局]