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- 国・地域名:
- EU
- 元記事の言語:
- 英語
- 公開機関:
- 欧州委員会(EC)
- 元記事公開日:
- 2023/04/27
- 抄訳記事公開日:
- 2023/05/31
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知的財産権:単一市場でイノベーション、投資、競争力を強化する新たな特許規則
- 本文:
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(2023年4月27日付、欧州委員会の標記発表の概要は以下のとおり)
欧州委員会は本日、企業、特に中小企業(SME)が自らの発明や新技術を活用し、EUの競争力と技術主権に貢献できるよう支援するための新たな規則を提案した。
この標準必須特許(standard essential patents:SEP)、危機的状況における特許の強制実施許諾(compulsory licensing of patents in crisis situations)、補充的保護証明書(supplementary protection certificates:SPC)に関する法改正に関する規則案は、より透明性が高く、効果的で将来にわたって有効な知的財産権の枠組みを構築するものである。
本提案は、6月1日より運用開始される「単一特許制度(Unitary Patent system)」を補完するものとなる。それぞれの出発点は、国際およびEUの知的財産法の既存の規定・原則であるが、単一市場の細分化をさらに排除し、事務手続きを削減し、効率を高めることにより、特許システムをより効果的なものにすることを目的としている。この強固な特許の枠組みにより、事業者や管轄当局は、緊急時を含め、公正なアクセスを確保しながら、イノベーションをより適切に保護できるようになる。これら特許イニシアチブでは、次の主要領域に取り組む。
■ 標準必須特許(SEP)
SEPは、標準開発機関(SDO)によって採択された技術標準の実施に不可欠であると宣言された技術を保護する特許である。このような標準は、たとえば、接続性(5G、Wi-Fi、Bluetooth、NFC など)やオーディオ/ビデオの圧縮・解凍の標準に関連している。「モノのインターネット」(IoT)の台頭により、SEP(特に接続標準)の適用範囲は広がる。したがって、技術へのアクセスを容易にし、イノベーションに報いるシステムがうまく機能することは、EUの技術主権にとって極めて重要である。
今回のSEPライセンス枠組み案は、バランスのとれたシステムを構築し、SEPの透明性、紛争の低減、効率的な交渉のためのグローバルベンチマークを設定することを目的としている。主な目標として次の2つがある:
・EUのSEP所有者と実施者の両方が、EU域内でイノベーションを起こし、製品を製造販売し、世界市場で競争力を発揮できるようにする。
・中小企業や消費者を含むエンドユーザが、最新の標準化された技術に基づく製品の恩恵を、公正かつ妥当な価格という形で享受できるようにする。本枠組み案は、SEPポートフォリオ、特許使用料の総額(特許所有者が複数の場合)に関してさらなる透明性を提供し、当事者がより公立敵意ライセンスのFRAND(公平・合理的・非差別的)条件)に合意できるようにする。
■ 強制実施許諾
特許の強制実施許諾は、政府が特許所有者の同意なしに特許発明の使用を許可するものである。一般に製造業者との自主的な実施許諾契約は、生産を拡大するための好ましい手段であるが、危機的な状況において、自主的な契約ができない、または適切でない場合、強制的な実施許諾が、最後の手段として、危機に関連する重要な製品や技術へのアクセスを提供するのに役立つことがある。現在、多くのバリューチェーンがEU全体で展開されているにもかかわらず、27か国の強制ライセンス実施許諾制度はパッチワーク状態である。これは、知的財産権の所有者と使用者の双方にとって、法的不確実性の原因となり得る。
新規則では、単一市場緊急措置(Single Market Emergency Instrument)、欧州保健緊急事態準備・対応機構(HERA)規制、欧州半導体法(Chips Act)などのEUの危機対応措置を補完する新たなEU全体の強制実施許諾制度を想定している。
■ 補充的保護証明書(SPC)
SPCは、規制当局によって認可されたヒト用または動物用医薬品、植物保護製材の特許期間を、最大5年間延長するものである。これらの分野におけるイノベーション、成長および雇用の促進が目的である。しかし、原稿制度下では、SPCの保護は国レベルでのみ行われており、その結果、断片化し、複雑で費用のかかる手続きや法的不確実性に繋がっている。
今回のイニシアチブでは、「単一特許制度」を補完するために、「単一SPC制度」を導入する。またこのSPC改革では、EU知的財産庁(EUIPO)がEU各国知財当局と緊密に連携して実施する集中審査手続きも導入される。
[DW編集局]