[本文]
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- 国・地域名:
- フランス
- 元記事の言語:
- フランス語
- 公開機関:
- 高等教育・研究省
- 元記事公開日:
- 2023/06/15
- 抄訳記事公開日:
- 2023/06/23
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研究・イノベで14項目を提言 政府の特別調査委
- 本文:
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研究・イノベーションに関する問題を調査する、高等教育・研究省の特別調査委は15日、「研究の見通しの明確化」「研究ユニットの運営や評価に関するデータ収集強化」など、計14項目の提言をまとめた報告書(通称「ミシオン・ジレ」)を同省に提出した。同省がこの報告書を公開している。
この調査委は、シルヴィー・ルタイヨ高等教育・研究大臣の依頼で、昨年12月に5人の有識者で発足した。政府はかねてから複数年研究計画(LPR)を実行しているほか、5か年投融資計画「フランス2030」にもとづく優先研究プログラム(PEPR)や大学イノベーション拠点(PUI)などのプログラムも順次進めているが、ルタイヨ大臣は「わが国が国際的なリーダーの役割を果たすため」などとして、こうした計画やプログラムの実効性や問題点についての報告を依頼。調査委は、大学や研究機関、関係エコシステムなどを対象にインタビューを約80回行い、関係者約200人への聞き取り結果にもとづいて報告書を作成したという。
報告書は、国が達成すべき「主要目標」を6個掲げるとともに、これらを達成するための手段としての「提言」を14項目掲げた。
まず主要目標は「研究・イノベーションの戦略組織を政府として明確にすること」「国立の研究機関(国研)や大学を研究・イノベーションの流れに乗せること」「組織運営を簡素化して研究の時間と意義を確保すること」「イノベーションの国家的なビジョンと地方の活力を結びつけること」「リスクテイキングを支援すること」「評価プロセスを構築すること」だった。
そのうえで「国研と大学などとの共同研究の見通しの明確化」「研究ユニットの運営や評価に関するデータ収集の強化」「研究拠点における研究インフラ共有の促進」「短期と長期の懸案両方に同時に応えるための研究支援」「若手研究者ら全員を対象とした3年間の研究資金提供」――などの提言が盛り込まれた。
今回の提言の多くは、これまで政府が問題と認識して取り組んできたこととおおむね一致するが、これらを今後さらにどの程度、制度設計や政策推進に反映していけるかが注目される。
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主要目標と提言項目(丸囲みした数字で表示)は次の通り。
■主要目標1.「研究・イノベーションの戦略組織を政府として明確にすること」
①国の最も高いレベルにおいて、サイエンスの存在を永続的に掲げ、確立すること。
②国の科学技術政策の責任官庁としての役割を高等教育・研究省に与えることで、ぶれのない省庁間連携のあり方を構築すること。
③課せられている懸案、各研究の特異性、科学的な重要課題などに、国の役割を適応させていくこと。■主要目標2.「国立の研究機関(国研)や大学を研究・イノベーションの流れに乗せること」
④国研が大学などと共同で行う研究について、国としての見通しを明らかにすること。
⑤国研が国から受託した研究については、研究自体の使命に加えて、受託者としての役割を果たすために必要な条件や評価を国が明らかにすること。
⑥国研と大学の間の実務面での連携を改めて確立するとともに、時流に適応させること。■主要目標3.「組織運営を簡素化して研究の時間と意義を確保すること」
⑦研究ユニットの運営や評価に関するデータ収集の強化。
⑧研究拠点における研究インフラ共有の促進。
⑨混成研究ユニット(UMR)の管理運営について、より明確かつ簡素化された枠組みを定めること。
⑩ユニットリーダーの裁量を大きくして支援すること。
⑪研究機関やユニットが研究を統括する能力を高めること。■主要目標4.「イノベーションの国家的なビジョンと地方の活力を結びつけること」
(提案項目なし)■主要目標5.「リスクテイキングを支援すること」
⑫応用研究かどうかにかかわらず、短期と長期の懸案両方に同時に応えることを資金面で支援する新しい方法を実行すること。
⑬毎年採用され、終身雇用される若手研究者ら全員に、3年間にわたり特別研究資金を提供すること。■主要目標6.「評価プロセスを構築すること」
⑭今回の提言に伴う進展については、一定の評価プロセスと対象を適用し、特に研究高等教育評価高等審議会(HCERES)が行う評価を適用すること。 [DW編集局]