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国・地域名:
フランス
元記事の言語:
フランス語
公開機関:
高等教育・研究省
元記事公開日:
2023/06/29
抄訳記事公開日:
2023/07/14

22年度博士登録数が4%減 化学、数学などは10%超低下

Baisse du nombre de premières inscriptions en doctorat en 2022 en particulier dans les domaines scientifiques

本文:

 高等教育・研究省は6月29日、昨秋スタートの2022年度にフランスの博士後期課程に登録された学生数が、21年度比でおよそ4%減少していたことを明らかにした。背景の分析や今後の展望などは示されていないが、特に化学・材料工学や数学などの分野では減り幅が10%を超えており、国としての科学技術の研究力を、中長期的に維持できるかどうかが問われているといえそうだ。

■博士登録者が4%減少

 同省がこの日発表した統計資料「Note Flash du SIES」によると、フランスの高等教育機関の博士後期課程に登録された学生数は、一昨年秋スタートの21年度は1万6,394人だったが、22年度は1万5,719人となり、4.1%減少となった。

 このうち生物学・医学分野は、21年度比で2.2%増加(2,949人から3,014人)したものの、それ以外は大半の分野で前年度から減少。特に減り幅が大きかったのは、▽化学・材料工学=14.7%(1,214人から1,035人)、▽農業・環境科学=13.1%(543人から472人)、▽数学・数理科学=10.1%(713人から641人)――などだった。

■博士取得者も減少傾向

 博士号の取得者数は、21年度比では1.9%増(1万3,588人から1万3,852人)となったが、19年度は1万3,915人、コロナ禍の影響を受けた20年度は1万1,806人だったことなどを考えると、増加傾向にあると明言することはできない。

 発表資料によると、フランスでの博士号取得者の数は、2012年以降は年平均0.7%のペースで減り続けているうえ、近年はこの減少ペースが加速している。12~17年は年平均で0.2%減と「ほぼ安定していた」(同省)が、17~22年は年平均で1.2%減となっているという。またすでに述べたとおり、22年度に登録者数が減少していることから、博士号取得者の減少は、数年後にさらに顕著に現れる可能性がある。

■人的流動性は「限定的」

 また同省は同じ資料の中で、外国の高等教育機関との派遣・交換協定にもとづく博士論文執筆の実績も公表した。公表されたデータは21年度分で、1,099件。20年度は1,223件だったために11.3%減を記録。同省は「(外国との人材交流にもとづく博士論文執筆は)ほとんど発展していない。国際的な人的流動性は限定的だ」などと記述した。

 地域別にみると、例年全体の4割超を占めている欧州が10.7%減(537件から485件)となったほか、例年フランスに多くの学生を送り込むアフリカが35.5%減(328件から242件)、アジアが12.2%減(138件から123件)となった。米州、豪州・環太平洋は、それぞれ13.8%(207件から232件)、23.5%(13件から17件)の伸びを記録したが、絶対数が少ないため、全体を押し上げるには至っていない。

<DW編集局からおことわり>

 この記事は、高等教育・研究省が発表した統計資料「Note Flash du SIES」第11号を参照し、当編集局が独自に構成したものです。この記事には、統計データのほか、現状分析にあたる記述を一部に含めていますが、これらのうち、カギカッコで囲んだ部分(本文中に2か所あります)が同省によって示された見解であり、カギカッコで囲んでいない部分が当編集局による独自の記述です。あらかじめご承知おきください。(フランス担当フェロー・内田遼)

[DW編集局]