[本文]

国・地域名:
フランス
元記事の言語:
フランス語
公開機関:
首相府
元記事公開日:
2023/06/28
抄訳記事公開日:
2023/07/28

フランス2030、表記を一部変更 SGPI「活動報告書」で

France 2030 : publication du rapport d'activité 2022 !

本文:

 首相府投資総務庁(SGPI)は6月28日、2022年の活動報告書を公表し、政府の5か年投融資計画「フランス2030」で実現したい「10の目標」と「6のテコ」を明らかにした。計画に大幅な変化はないが、表記がこれまでの「10の目標」「5の必要条件」「3の原則」から変更されたことになる。

 「2030」は、研究開発を含むイノベーションに重点的に投資する総合計画として、21月10月にマクロン大統領が自ら発表。一部は前身の投融資計画を引き継ぎ、22年1月に本格的にスタートした。一般会計に専用の財源枠があり、投資予定額は26年までで計約540億ユーロ。国として達成すべき「10の目標」などを明示しており、分野・領域ごとの「国家戦略」は、原則的にこの「2030」にもとづいて策定されている。

 今回明らかにされた「10の目標」「6のテコ」は次の通り(カッコ内は、今回の活動報告書で示された総投資予定額)。

【10の目標】(従来の「10の目標」とほぼ同じ)
➊2030年までに小型モジュール原子炉を開発する(12億ユーロ)
➋脱炭素水素のリーダー国を目指す(32億7,500万ユーロ)
➌製造業の脱炭素化(56億ユーロ)
➍2030年までに排ガスのない車を200万台生産する(36億ユーロ)
➎低炭素型の航空機を最初に建造する(15億ユーロ)
➏安全・安心な食料のイノベーションを起こす(23億ユーロ)
➐医療分野において欧州で最もイノベーティブで自律的な国を目指す(75億ユーロ)
➑文化・創造のコンテンツ生産のトップ国を目指す(10億ユーロ)
➒宇宙探査を行う (15億ユーロ)
➓深海探査を行う(3億5,000万ユーロ)

【6のテコ】(従来の「5の必要条件」に今回の③を付け加えて更新した形)
①原材料へのアクセスを担保(29億ユーロ)
②エレクトロニクス、ロボティクス、AI機器などの戦略的要素へのアクセスも担保(54億ユーロ)
③将来指向の教育による人材育成(28億ユーロ)
④安全で自律的なデジタル技術(40億ユーロ)
⑤高等教育、研究、イノベーションの関係エコシステムが持つ卓越性の活用(40億ユーロ)
⑥スタートアップ企業の促進、工業化および成長(42億ユーロ)

 また「フランス2030」の効果を図る指標としては、▽イノベーション、▽経済成長、▽脱炭素と持続可能な成長、▽戦略の自立性、▽人材と知識、▽リーダーシップ、▽医療と社会、▽男女共同参画――の8項目が掲げられた。

 さらに同庁は、報告書のなかで「2030」に関する様々な指標も公表し、民間や国以外の公共セクターからの投資額を、政府一般会計からの投資額で割った数、いわゆる「巻き込み効果」が、約1.3倍に達していることなどを明らかにした。前身の計画「未来投資プログラム」(PIA)を推進していた2020年当時は約1.1倍だった。示された主な指標は次の通り(第4次PIA推進中だった2021年1月から22年12月末までの数字)。

▽国から投融資する予定総額540億ユーロのうち、すでに111億ユーロを投下。
▽計画遂行のための特設チームなどは106種類が始動。
▽投融資による支援対象となったのは、2,575の機関や個人。
▽国全体の共通利益や持続可能性など、将来の目標にかかわるプロジェクトは1,515件に。
▽投融資の「巻き込み効果」は1.3倍に。
▽本土の全13地域圏のうち、「2030」の枠組みで国と共同プロジェクトを運営する契約を結んだのは、11に上る。含まれていない北西部ブルターニュと地中海地方コルスの両地域圏も今年中に締結の見込み。

<DW編集局からおことわり>

 今回の首相府投資総務庁の発表資料には、この記事の見出しのような「(フランス2030の)表記を変更した」という趣旨の文言はありません。しかし内容を分析しますと、これまでの政府資料とは表記が明らかに異なるうえ、なおかつこの異変が初めて確認されたため、当編集局においては「政府が表記を変更した」と解釈しました。(フランス担当フェロー・内田遼)

[DW編集局]