[本文]

国・地域名:
EU
元記事の言語:
英語
公開機関:
欧州委員会(EC)
元記事公開日:
2023/07/05
抄訳記事公開日:
2023/08/09

欧州グリーンディール:植物・土壌など天然資源のより持続可能な利用

European Green Deal: more sustainable use of plant and soil natural resources

本文:

(2023年7月5日付、欧州委員会の標記発表の概要は以下のとおり)

欧州委員会は本日、重要な天然資源の持続可能な利用のための一連の施策を採択した。これによりEUの食料システムと農業の強靱性が強化されることになる。

土壌モニタリング法は、土壌の健全性に関するデータを収集し、農家やその他の土壌管理者が利用できるようにすることで、2050年までに健全な土壌を実現する道筋をつけるものである。この法律はまた、持続可能な土壌管理を常態化し、土壌汚染による健康や環境上のリスクが許容できない状況に対処する。また、今回の法案は、気候変動に強い作物の開発や化学農薬の使用削減を実現する新たなゲノム技術の安全な利用を可能にし、植物や森林のためのより持続可能で高品質で多様な種子と繁殖材料を確保することで、イノベーションと持続可能性を促進する。さらに、新たな施策は、食品や繊維の廃棄物の削減も提案しており、天然資源のより効率的な利用とこれらの部門からの温室効果ガス排出のさらなる削減にも貢献するものである。

これらの施策は、すべての人に長期的な経済的、社会的、健康的、環境的利益をもたらす。また、豊かな農村地域、食糧安全保障、強靭で繁栄するバイオエコノミーに貢献する。

■ 土壌とその資源の価値を高める新たなEU法

現在、EU域内の土壌の60~70%が不健全である。さらに、毎年10億トンの土壌が浸食によって流され、肥沃な表土が急速に消失している。EU初の土壌に関する法制の提案は、土壌の健全性の定義を統一し、包括的かつ一貫したモニタリング枠組みを導入し、持続可能な土壌管理と汚染地の回復を促進するものである。本提案では、EUの「土地利用・被覆面積フレーム統計的調査(Land Use and Coverage Area frame Survey :LUCAS)」の土壌サンプリングデータと、「コペルニクス」の衛星データなど、官民のデータを組み合わせ、複数の土壌データソースを統合する。最終的な目標は、EUの「ゼロ汚染(Zero Pollution)」目標に沿って、2050年までに健全な土壌を実現することである。

土壌データは、イノベーション、技術的・組織的なソリューション、特に農業実践におけるソリューションを支援する。さらに、このデータは干ばつ、保水、浸食の動向に関する理解を深め、防災と管理を強化する。健全な土壌とより優れたデータは、農家や土地管理者にさらなる収入の機会を提供する。

この提案はまた、加盟国に対し、汚染者負担の原則に基づき、土壌汚染による人間の健康と環境に対する容認できないリスクに対処するよう求めている。

■ 新たなゲノム技術による食料システムの耐久性の向上

「新ゲノム技術(New Genomic Techniques:NGT)」は、我々の食糧システムの持続可能性と強靭性の向上に資する革新的なツールである。気候変動に強く、害虫に耐性があり、肥料や農薬が少なくて済み、より高い収量を確保できる、優れた品種の開発が可能になる。ほとんどの場合、これらの新技術は、従来の技術よりも、より的確で、正確で、より迅速な変化をもたらす。本提案では次のことを実施する。

・NGTによって得られる植物の2つのカテゴリーを確立する。即ち、自然発生植物や従来の植物に近いNGT植物、およびより複雑な改変を施したNGT植物である。
・両カテゴリーは、それぞれ異なる特性とリスクプロファイルを持つことを考慮して、市場に出す場合には各々異なる要件を適用する。
・植物の開発をより持続可能な方向に導くためのインセンティブを与える。
・EU市場に流通するすべてのNGT植物に関する透明性を確保する(種子の表示など)。
・NGT製品の経済的、環境的、社会的影響を的確に監視する。

■ より持続可能で多様な植物・森林の繁殖材料

植物・森林の繁殖材料の生産および販売に関する規制案は、種子、挿し木、その他の植物繁殖材料(PRM)の多様性と品質を向上させる。持続可能性試験(耐病性など)を通じて、将来に備えた植物品種を育成することで、安定した収量を保証する。また、種子は気候変動の影響により適切に適応し、栽培作物の遺伝的多様性を維持し、食糧安全保障の確保に貢献する。

森林の繁殖資材に関しては、森林が気候変動により適切に適応できるよう、適切な木が適切な場所に植えられるよう支援する。樹木の育種により、森林の気候変動への適応を加速できる。

■ 食品・繊維廃棄物の削減

食品廃棄物対策は、人間の食糧消費を節減し、食糧安全保障に貢献する。企業や消費者の節約にも役立ち、食品の生産・消費による環境への影響を軽減する。繊維廃棄物も、限られた天然資源に負担をかけている。

[DW編集局]