[本文]

国・地域名:
英国
元記事の言語:
英語
公開機関:
英国研究・イノベーション機構(UKRI)
元記事公開日:
2023/06/14
抄訳記事公開日:
2023/08/22

UKRI、量子技術開発に4,500万ポンドの助成

UKRI awards £45 million to develop quantum technologies

本文:

(2023年6月14日付、英国研究・イノベーション機構(UKRI)の標記発表の概要は以下のとおり)

科学担当大臣はこのほど、英国の量子技術研究・イノベーションをさらに推進するための新たな資金提供を発表した。これには以下が含まれる。

・測位・航法・タイミング(PNT)のための量子技術を探究する12件のプロジェクトに800万ポンド
・ソフトウェア対応量子計算に取り組む11件のプロジェクトに600万ポンド
・量子コンピューティング応用における19件のプロジェクトの実現可能性調査に600万ポンド
・中小企業研究イニシアティブ(SBRI)を通じて、7件の量子対応PNTプロジェクトに2,500万ポンド

「UKRI技術ミッション基金(UKRI Technology Missions Fund)」を通じたこれらの新規投資は、10年近くにわたって実施されてきた国家量子技術プログラムを基盤とするものである。

■ 量子物理学の活用

PNTを研究する12件のプロジェクトのうちの1件は、インペリアル・カレッジ・ロンドンのジョセフ・コッター博士が主導している。量子物理学を活用して、水中や地下で使用できる新しいタイプのセンサー技術の開発を目指している。現在社会の多くが依存している全地球測位衛星システム(GNSS)の使用を、量子センサーがどのように補完できるかを探る。

GNSSは、配達する商品の位置にリアルタイムでのアクセスを可能にし、海上輸送や道路輸送を含む商品やサービスの輸送を支援している。ただし、天候不順や電波妨害に弱く、水中や地下での機能には限界がある。インペリアル・カレッジ・ロンドンのチームは、地下のネットワークに優れた位置精度を提供し、GNSSに代わるより強靱で安全な新たなナビゲーション・センサー技術を開発している。チームは、ロンドン交通局(TfL)と提携し、列車上で新技術をテストする予定である。TfLのネットワークの45%は地下にある。

一連のプロジェクトは、国防科学技術研究所からも40万ポンドの支援を受けている。

■ 量子コンパイラ

国立量子コンピューティング・センター(NQCC)と提携して実施される11件のソフトウェア対応量子コンピューティング・プロジェクトは、アルゴリズム機能を進化させ、量子コンピュータの性能を向上させる。

オックスフォード大学のアレクス・キッシンジャー博士が率いるプロジェクトは、次世代の量子コンパイラを開発する。量子コンパイラは、人間が書いたコードをマシンが実行できるものに変換するツールで、多くのエラーの原因を把握し、制御する能力を高める。これにより、信頼性の高いパフォーマンスを独立して確認できる効率的なソフトウェアが生成される。

■ 量子コンピューティングの実現可能性調査

19件の量子コンピューティング応用の実現可能性調査では、量子コンピューティングの実用上の利点を実証する。

・量子コンピューティングと量子機械学習による航空輸送における炭素排出量削減の研究
・マネーロンダリングを検出・削減するより良い手法の開発
・運用上の医療ユースケース(現場リストによる患者割り当て、緊急治療患者のトリアージ、地域看護師の訪問スケジュールなど)に対処するための、量子コンピューティング技術の商業的活用
・酵素を標的とした創薬のための、量子コンピューティングをベースとした次世代アプローチの開発

■ UKRIのSBRIを通じて支援される7件のプロジェクトは、PNTのための量子対応システムを開発する。目的は、磁場センサーや重力場センサーなど、ナビゲーション・アプリケーション向けの量子対応センサーを提供することである。

[DW編集局]