[本文]

国・地域名:
英国
元記事の言語:
英語
公開機関:
財務省
元記事公開日:
2023/07/04
抄訳記事公開日:
2023/08/29

イノベーションを促進する技術規制のあり方検討

Introductory letter about Pro-innovation Regulation of Technologies Review

本文:

(2023年7月4日付、財務省の標記発表の概要は以下のとおり)

2022年秋季財政演説で財務大臣は、英国が新興技術に対する適切な規制を可能にする方法について助言する、「イノベーションを推進する技術規制のあり方検討(Pro-innovation Regulation of Technologies Review)」を発表した。政府首席科学顧問(当時)のパトリック・ヴァランス卿は、この検討の責任者として、2023年2月に財務大臣に書簡を送り、主要な課題、関連原則、イノベーション推進規制の最善の方法について初期の見解を述べた。主要部分を下記に抜粋する。

◼ 課題

産業界や規制当局との連携を通じて、次のような規制上の課題を特定した。業種より重大度は異なる。

・断片化
技術イノベーションとその応用の多くは、既存の規制権限と必ずしも合到しておらず、一貫した規制対応を行うためには、複数の規制当局間の調整が必要である。特にデジタル分野では規制当局間の連携が不十分で、対応の重複、二重規制、対応の不一致が生じており、中小企業にとって規制の状況を見通すことが困難になっている。

・規制の導入速度
技術は、既存の規制体制の対応速度よりも速やかに発展する事が多い。これは、規制当局が後塵を拝し、革新的な製品やサービスの導入が遅れ、新たなアプローチに対する信頼が損なわれることを意味する。ただし、制限的な規制の導入が早すぎると、新興技術の開発と展開が妨げられる可能性がある。

・スキル
規制当局は、懸案のスキルや人材(データサイエンティストやAI専門家など)を引き寄せる際に、民間部門との競合的状況下では困難である場合を報告している。これにより、イノベーターと信頼を持って関わる能力が損なわれ、状況を充分把握せずに規制を行うリスクが生じる可能性がある。公務員の給与規模と過程が、特定分野の規制担当者の問題として挙げられている。

・インセンティブ
規制担当者は、特に法定の目的や義務といった動機に縛られる。規制担当者が、リスクを負って新しく革新的な製品を認可することで得られる便益は明確ではなく、自らが課されているさまざまな義務や目的(安全性、競争、消費者保護、環境保護など)をトレードオフするのに苦慮することがあると報告している。このため、規制担当者の行動や判断が、イノベーションや投資の支援よりもリスクの最小化を優先する可能性がある。

・能力
イノベーション推進プログラム(サンドボックス、イノベーション・ハブ、規制上の課題設定など)は、資源に大きく作用されるので、規制担当者は従来の予算や人的資源では、これらの「上流」での活動を維持することに課題があると報告している。

◼ 今後の進め方

規制の設計と導入に携わる関係者への指針として、以下の主要なテーマを特定した。

・規制担当者は、リスクと便益に対して相応かつ柔軟なアプローチをとり、その介入がイノベーションに及ぼす効果が明確に考慮されるよう、支援される必要がある。
・該当する場合には、技術自体ではなく、技術の応用の規制に焦点を当てることが重要である。
・規制の導入が早すぎれば、初期の技術に弊害が及ぶ可能性がある。商業化が近い応用に規制を集中させることが、安全な展開のための市場枠組みの構築に役立つ。
・実験的なアプローチ(サンドボックスなど)を使用することは、確立された技術の調和を模索しつつも、初期段階の技術に対して規制を進化させる点で、英国を「先駆者」として位置づけるのに有益である。
・規制当局が商業的成功の要因を理解し、規制の設計と実施に役立てるために、イノベーターと早い段階(「上流」)から関わることは大きなメリットがある。
・規制当局は、機動性と柔軟性を維持するために、基準・指針・ベストプラクティスなど、立法以外の明確化措置の検討を含め、原則ベース・結果ベースの規制を優先すべきである。
・規制の設計と意思決定においては、倫理的配慮を取り入れ、イノベーションに対する国民の信頼を築くべきである。透明性が重要である。

[DW編集局]