[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
科学技術政策局(OSTP)
元記事公開日:
2023/08/28
抄訳記事公開日:
2023/09/29

G20首席科学アドバイザー円卓会議の成果

The G20 Chief Science Advisers’ Roundtable Meeting Outcome Document and Chair’s Summary

本文:

(2023年8月28日付、大統領府科学技術政策局(OSTP)の標記発表の概要は以下のとおり)

2023年8月28日、第2回G20-首席科学アドバイザー円卓会議(G20-CSAR:G20-Chief Science Advisers’ Roundtable)がインド・ガンディナガルにて開催された。その「成果報告と議長によるまとめ」文書の概要は以下の通りである。[編集局注:当文書は17のパラグラフから構成されており、うちパラグラフ1-12および14-17が全会一致で合意された「成果報告」に該当し、ウクライナでの戦争に関する議論について述べたパラグラフ13のみが「議長によるまとめ」に該当する。]

本会議は、科学アドバイザーが、エビデンスに基づいた政策立案に向けた主要課題について世界規模で持続的に関与すること、またそれゆえ各国内および国際レベルでの科学アドバイスのメカニズムを強化することについて重要性を認識する。今回のG20-CSARは、次のような世界的優先課題等について議論を行った。

■疾病予防、パンデミック対応のための「ワンヘルス(One Health)」アプローチの活用
ヒト、動物、植物、環境に対する相互依存的な健康上の脅威は、ワンヘルスアプローチを通じて包括的に対処されるべきである。疾病モデリング、疫学情報、環境・病原体モニタリングなど、疾病対策に関連する知識や技術のための協力や能力開発のための仮想空間が必要である。また、この分野での協力を促進するため、ワンヘルス研究機関間の連携と継続的な関与を推奨する。

■学術的科学知識へのアクセス拡大に向けた地球規模の連携
公的資金による学術的科学知識へのG20加盟国内外のコミュニティによる即時的かつ普遍的なアクセスを可能にすることが必要である。各国の法制度や政策を認識した上で、ベストプラクティスに基づくオープンアクセスおよびパブリックアクセスに関する政策やプログラムを相乗的に調整し、連携させるために協働することが重要である。なお、このオープン・パブリックアクセス政策は、普遍的人権の尊重、国家安全保障の確保、学問の自由、研究インテグリティ、プライバシー、知的財産権の保護に関する原則に基づくべきである。具体的には、公的資金による研究成果へのアクセス拡大のため、FAIR(Findability、Accessibility、Interoperability、Reuse)原則に沿った国内及び国際的なリポジトリ間のリンクを可能にする相互運用基準が確立することを推奨する。

■科学技術エコシステムにおける多様性、公平性、包摂性、アクセシビリティ(DEI&A:Diversity, Equity, Inclusion, and Accessibility)の確保
構造的不平等に対処することは、科学・教育エコシステムにおけるDEI&Aを向上させ、科学的人的資本を高め、共通の社会的な責務を果たすための中心課題である。多様で包摂的な人材が重要であることを認識し、包摂性とアクセシビリティを念頭に置いた公平な科学技術活動を推奨する。特に、伝統的あるいは先住民が持つ知識体系の貢献を認めるとともに、言語や知識体系の多元性を正当に認識すべきである。また、プライバシーを保護しつつ、DEI&A関連データの収集と統合に向けた取り組みを進めることは重要である。比較可能なDEI&A指標に関する包括的なデータベースの開発と公表を奨励する。

■地政学的問題
ウクライナでの戦争について議論を行い、国連安全保障理事会および国連総会などで表明された各国の立場を再確認し、G20が安全保障問題を解決する場ではないことを認識しつつ、安全保障問題が世界経済に重大な影響を及ぼしうることを確認した[編集局注:この箇所が、当文書における議長によるまとめであるパラグラフ13に該当する]。平和と安定を守るためには、国際法と多国間システムの堅持が不可欠である。核兵器の使用および使用の脅威は容認できるものではなく、今日が戦争の時代であってはならない。

■包括的、継続的、かつ行動指向のグローバルな科学的諮問メカニズムの創設
本会議は、知識の非対称性に対処するために効果的な科学的助言を行う各国の首席科学アドバイザーが一堂に会する、強固で効果的なメカニズムの創設に向けて努力する。包括性、異質性、相互依存性、透明性、専門知の多元性、そして集団的関心に基づく科学的助言プロセスのベストプラクティスを交換するため、G20-CSARを自発的な知識と資源の共有のためのツールとして活用する方法についても探求する。

[DW編集局]