[本文]

国・地域名:
英国
元記事の言語:
英語
公開機関:
英国研究・イノベーション機構(UKRI)
元記事公開日:
2023/09/27
抄訳記事公開日:
2023/10/31

世界で最も強力なレーザー発生装置に8,500万ポンドの投資

UK science facility receives £85m for world’s most powerful laser

本文:

(2023年9月27日付、英国研究・イノベーション機構(UKRI)の標記発表の概要は以下のとおり)

UKRIは、科学技術施設会議(STFC)の中央レーザー施設(Central Laser Facility:CLF)に8,500万ポンドを投じ、世界最強となるバルカン20-20(Vulcan 20-20)レーザーの建設を含む大規模なグレードアップを行う。

◼ 物理学でのレーザーの活用

CLFは、南オックスフォードシャーのSTFCラザフォード・アップルトン研究所(RAL)に拠点を置き、プラズマとして知られる物質の4番目の状態(固体、液体、気体に加えて)を作り出すために、一連のレーザーを使用している。プラズマは、通常の物質が、非常に高い温度や圧力などの極限状態に置かれたときに発生する。プラズマ中の粒子は通常とは異なる動作をするため、科学者はこれを研究することで、バッテリーなどの重要製品の材料など、すべての物質の基本的な特性について知見を得ることができる。

◼ バルカン20-20へのグレードアップ

現在、CLFで最も強力なレーザーはバルカンレーザーであり、主にプラズマ物理学で幅広い用途に使用されている。このレーザーは、アップグレードによって従来のレーザーの100倍、つまり最も明るいサハラ砂漠の太陽光の100万倍、10億倍もの明るさとなる。
バルカン20-20レーザーは、エネルギー出力20ペタワット(PW)のメイン・レーザー・ビームと、最大20キロジュール(KJ)の出力を持つ8本の高エネルギー・ビームを生成することから、そう名付けられた。出力が20倍に増加しており、世界で最も強力なレーザーになると期待されている。

◼ 世界的なニーズに応える

CLFは、最先端のレーザー研究施設としての地位を確立しているが、この分野での競争は近年激化している。さらに、バルカンレーザーは1997年の開設以来、利用の申し込みが殺到しており、この次世代レーザー施設に対する科学的需要の高さを示している。

バルカン 20-20へのアップグレード・プログラムの完了には、6年かかると見込まれており、さまざまなキャリアの段階にある科学者、設計者、エンジニア、技術者に、新たな雇用を生み出すことにもなる。

◼ 科学の限界を押し広げる

バルカン 20-20レーザーは、超新星や太陽フレアなどの天体物理現象の解明から、クリーン・エネルギー源としてのレーザー核融合の可能性まで、さまざまな科学領域の理解を深めるのに役立つ。計画されている実験には、通常は宇宙でしか見られない強力な電磁場を利用して物質と反物質のペアを作成することや、がん治療のためのイオン放射線療法の可能性を探る新たな粒子加速法の研究などがある。

[DW編集局]