（2023年11月7日付、英国研究・イノベーション機構（UKRI）の標記発表の概要は以下のとおり）

あるスタートアップ企業が、がんやその他の病気の抗体療法を受ける患者の生活を改善する医薬品の工場を宇宙に建設する技術を開発している。現在、がんの抗体療法を受ける患者は、点滴を受けるために毎回何時間も病院に留まる必要があり、さらに侵襲的な治療でもある。この問題に対処するため、スタートアップ企業のBioOrbitは、宇宙でのがん抗体治療薬製造を検討することで、この治療法の変革を目指している。これらの薬剤は、微小結晶であるインスリンと同様に、自宅で投与することが可能になる。

◼ 優れたタンパク質

BioOrbit社の狙いは、新たな薬物結晶化技術に基づいて、がんの抗体療法をより利用しやすく便利なものにすることである。薬物が結晶化されていれば、インスリンと同様に、皮下注射が可能となる。しかし、タンパク質抗体医薬品は特に結晶化が難しく、地上では十分な品質が得られない。そこで宇宙が登場する。重力のない宇宙で抗体を結晶化すると、地球上で形成される結晶よりも優れた品質の結晶を作成できる。

◼ 宇宙での医薬品製造

BioOrbit社は、欧州宇宙機関（ESA）ビジネス・インキュベーション英国センター（ESA BIC UK）に最近加入した革新的な企業の1つである。ここでは、タンパク質抗体医薬品の宇宙での大規模結晶化に必要なハードウェアを開発することで、その技術を次のレベルに引き上げる準備ができている。この技術は、通院が難しい遠隔地の患者や、来院を避けることが望ましい免疫力低下患者にも恩恵をもたらす可能性がある。

◼ 宇宙技術系新興企業の支援

ESA BIC UKは、科学技術施設会議（STFC）が（ESA、英国宇宙庁、レスター大学）と協力して管理する、宇宙技術新興企業向けの世界最大の企業インキュベーション・プログラムの一部である。2011年以降、130社を超える英国の新興企業や起業家を支援し、宇宙・衛星技術を利用して、持続可能性から医療技術に至るまで、多様でエキサイティングな分野における新たな製品やサービスを開発している。

[DW編集局]