[本文]

国・地域名:
英国
元記事の言語:
英語
公開機関:
英国研究・イノベーション機構(UKRI)
元記事公開日:
2023/11/08
抄訳記事公開日:
2023/12/13

新型コロナウイルスの変異種への対応

Improving the way we prepare for future COVID-19 variants

本文:

(2023年11月8日付、英国研究・イノベーション機構(UKRI)の標記発表の概要は以下のとおり)

科学者らは、強力なシミュレーションと機械学習技術のおかげで、COVID-19ウイルスの進化がたらす将来の新型脅威の理解と予測に向けて大きな進歩を遂げている。Biophysical Journal誌に掲載されたこの研究は、ハートリー国立デジタル・イノベーション・センター(HNCDI)にある科学技術施設会議(STFC)のハートリー・センターとIBMの研究者チームが主導したものである。これにより、ウイルス蛋白質が分子レベルでどのように動作するか、およびウイルスの進化に関与する物理的要因について、貴重な初期の知見が得られる。

■ 世界的な健康リスク

新型コロナパンデミックの原因となったSARS-CoV-2を含むすべてのウイルスは、ライフサイクルを通じて自然に遺伝子変異を起こす。これらの変異の多くはウイルスにわずかな影響しか与えないが、一部の変異はその特性を大きく変え、感染力や病気の重症度に影響を与える可能性がある。さらに、変異はワクチンや検査の効果にも影響を及ぼし、ウイルスに有利な効果をもたらした場合、世界的な健康リスクを高める優勢変異株を生み出す可能性がある。

■ ウイルスの変異を予測する

「懸念される変異体」の初期の兆候を検出し、公衆衛生への影響を迅速に評価するシステムの確立においては、すでに大きな進歩が達成されている。しかし、同様に重要なことは、これらの変異を分子レベルで深く理解し、それがウイルスにどのように進化上の利点をもたらすのかを把握することである。これらの取り組みを他のツールと組み合わせることで、将来の変異や亜種を予測し、それに備えることができる。

■ 分子の秘密を解き明かす

研究チームは、HNCDIの強力なスーパーコンピュータを使用して、大規模な分子シミュレーションを行い、SARS-CoV-2ウイルスのスパイク蛋白質(ウイルス感染を引き起こす原因となる)の構成と、それがヒト細胞上の標的とどのように相互作用するかを調査した。その結果、オミクロン亜種における遺伝子の変化が、元の武漢株と比較した場合、さらに2つの異なるオミクロン株亜種間でも、スパイク蛋白質の分子レベルでの構造の違いを齎していることを明らかになった。

研究者らはまた、ウイルスとヒトの細胞との相互作用に影響を与える可能性がある、ヒト細胞に結合している分子である糖鎖についても調査した。その結果、変異により、糖鎖が結合プロセスにおいて役割を果たし、ウイルスがより効果的にヒト細胞に結合できるようになることが明らかになり、ウイルスの急速な蔓延を説明できる可能性を示した。

[DW編集局]