[本文]

国・地域名:
英国
元記事の言語:
英語
公開機関:
科学・イノベーション・技術省(DSIT) 
元記事公開日:
2023/11/23
抄訳記事公開日:
2023/12/20

2023年秋季予算計画:科学、イノベーション、テクノロジーを支援

Science, Innovation and Technology backed in Chancellor’s 2023 Autumn Statement

本文:

(2023年11月23日付、科学・イノベーション・技術省(DSIT)の標記発表の概要は以下のとおり)

11月22日、秋の予算計画(Autumn Statement)において、計算科学から量子力学、ライフサイエンスからイノベーションを促進する規制まで、科学技術に関する数億ポンド規模の施策が発表された。

科学、イノベーション、テクノロジーの分野において、コンピューティングにおける人工知能(AI)への新たな5億ポンドの投資は、英国の世界をリードする科学者とAI研究者が、全ての者に利益をもたらす傑出した新発見を成し続けるよう支援するとともに、AIスタートアップをはじめとする企業が、生産性とイノベーションを加速する最先端のコンピューティングにアクセスできるようにし、英国をAIスタートアップ設立の世界最良の場所にする。このコンピューティング能力の発展は、経済成長を促進するだけでなく、気候変動への取り組みや新薬発見の促進など、社会にも利益をもたらす。

さらに、NHSへの量子センシングの導入など、重要な目標達成に向けて、学界、産業界、民間投資家が時間と資源を投入するよう奨励する、新たな5件の量子ミッション(Quantum Mission)が発表された。

また、新たな資金提供による企業のスケールアップを支援し、スピンアウト企業への出資に関するより明確なルールを設ける。又、創造性と技術進歩を促進しつつ、安全基準を満たすために新たな製品、サービス、ビジネスモデルを試験するための監視付きの実世界テストまたは模擬テストを提供する新たな規制サンドボックスによって、イノベーション推進規制を強化する。

■ 技術と投資

・コンピューティング
財務大臣は、AI研究リソース拡大の一環として、AIコンピューティングに2年間で5億ポンドを投資すると発表した。これにより、英国の世界をリードする科学者やAI研究者が、複雑で長時間にわたるタスク処理に必要な最先端のコンピューティング能力にアクセスできるようになる。

・量子ミッション
財務大臣は、コンピューティング、医療、ナビゲーションなどの領域における英国向け投資と研究に明確な行程を設定することで、この技術の世界的リーダーとしての英国の地位を確保することを目的とした5件の量子ミッションを発表した。25億ポンドの量子戦略(Quantum Strategy)の支援を受けるミッションは次のとおりである。
①1兆回の演算を実行し、経済の主要分野で従来のスーパーコンピュータをはるかに上回るメリットを提供するアプリケーションをサポートできる、英国拠点の量子コンピュータの運用(2035年まで)
②将来の量子インターネットの先駆けとなる世界最先端の量子ネットワークの大規模展開(2035年まで)
③早期診断・早期治療を通じて慢性疾患患者がより健康で長生きできるようにするための、すべてのNHS Trustへの量子センシング対応ソリューションの導入(2020年まで)
④衛星信号に依存せずレジリエンスを達成する次世代精度の提供、時計を含む量子ナビゲーション・システムの航空機への導入(2030年まで)
⑤移動可能でネットワーク化された量子センサーによる新たな状況認識機能力の、運輸・通信・エネルギー・防衛分野の重要基盤構造における活用(2030年まで)

・半導体
財務大臣は、英国基盤構造投資銀行(UKIB)に関する政府の優先課題を明確にし、半導体製造を含め、同銀行の戦略目標に沿った重要サプライチェーンへの投資を確実に行えるようにした。UKIBはこの分野に積極的に関与し、市場機会を模索している。UKIBには220億ポンドの資金力がある。

■ 企業の創設とスケールアップ

・全額支出控除
財務大臣は、全額支出控除、つまり主要料金支出に対する初年度100%の控除と、それに関連する特別料金支出に対する初年度50%の控除を恒久化すると発表した。これは英国近代史上最大の法人税減税を実現するもので、英国がG7の中で最も低い総合法人税率と最も寛大な資本控除を有することを意味する。

・スピンアウト
大学からのスピンアウト企業は、英国経済にとって非常に重要な役割を果たしており、2014年以降、投資はほぼ5倍に増加している。オックスフォード大学副学長とケンブリッジ・イノベーション・キャピタル運営パートナーによるインディペンデント・レビューでは、英国をスピンアウト企業設立の世界最適の場所にするため、大学や投資家が採用すべきイノベーションに適した政策を提言している。この成果を活かすため、政府は提言をすべて受け入れ、その実現方策を示している。いくつかの有力大学が、この提言を実施しており、政府はより多くのスピンアウト企業を育成するべく2,000万ポンドを拠出する予定である。

・ディスカバリ・フェローシップ
政府は、王立協会へ措置した2億5,000万ポンドの財源によって立脚する新たなファラデー・ディスカバリー・フェローシップ(Faraday Discovery Fellowship)を支援している。これは優秀な研究人材への多額の長期投資であり、少なくとも30名の一流の中堅科学者・研究者における、STEM分野での画期的な発見に基づく研究を最大10年間支援する。研究プロジェクトは幅広いSTEM主題に及び、工学生物学や量子など政府の優先科学技術領域も含め、英国が科学研究の最先端にあり続けることができるようにする。

・ベンチャーキャピタル・スキル・フェローシップ・プログラム
英国のベンチャーキャピタル産業をさらに強化するため、財務大臣は次世代科学技術ベンチャー投資家の育成に向けた300万ポンドのフェローシップ・プログラム制度を発表した。

・バッテリー製造

・研究開発イノベーション(RDI)の組織的状況調査報告(Landscape Review)に対する政府の対応

■ スキル

・数理科学に焦点を当てた国立アカデミーの新設。ビジネス案件に応じ、政府が3年間で最大600万ポンドのシード資金にて支援
・生命科学系製造業へ5.2億ポンド措置。

■ 規制

・規制サンドボックス
DSITは、科学・技術の需要を刺激し、英国の価値観を代表し、国民を保護しながら投資を誘致する規制と標準へのイノベーションに優しいアプローチを支援するため、電気通信スペクトル共有、工学的生物学、宇宙のための規制サンドボックスを立ち上げた。

■ 宇宙

・地球観測への投資:2024年1月からのCopernics計画再参画に向け、今年度0.47億ポンド措置
・低軌道衛星開発:欧州宇宙機関のテレコミュニケーション・システム先端研究(0.6億ポンド)の下、0.15ポンドを措置

[DW編集局]