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- 国・地域名:
- 英国
- 元記事の言語:
- 英語
- 公開機関:
- 英国研究・イノベーション機構(UKRI)
- 元記事公開日:
- 2023/11/30
- 抄訳記事公開日:
- 2024/01/12
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世界最大の遺伝子プロジェクトが驚くべき新データを発表
- 本文:
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(2023年11月30日付、英国研究・イノベーション機構(UKRI)の標記発表の概要は以下のとおり)
医学研究にとって重要で画期的な出来事として、英国バイオバンク(UK Biobank)は、50万人の参加者の全ゲノム配列から得られた驚くべき新データを発表した。これにより、新たな診断法、治療法、治療薬の発見が促進されることになる。ユニークな点として、非識別化されたデータ(氏名、住所、生年月日、担当医などを除いたもの)のみを含む保護されたデータベースを介して、世界中の承認された研究者も利用できる。
この豊富なゲノムデータは他に類を見ないものである。しかし、それが医療の未来を決定づける瞬間となるのは、英国バイオバンクが過去15年間にわたって収集してきた①ライフスタイル、②全身画像スキャン、③健康情報、④血液中のタンパク質、など既存の豊富なデータと組み合わせて使用するときである。
UKRIは、英国バイオバンクをその構想当初から支援しており、医学研究会議(MRC)は、この生物医学データベースの共同創設出資機関の1つである。英国バイオバンクの最初の参加者5万人の全ゲノムの配列を決定したパイロット研究は、MRCの資金によるものであった。残りの45万人の配列決定は、Innovate UK主導の産業戦略チャレンジ基金(Industrial Strategy Challenge Fund)の「データによる早期診断と精密医療チャレンジ(Data to Early Diagnosis and Precision Medicine Challenge)」の一環として行われた。
2億ポンド以上の投資と5年間、35万時間にわたるゲノム配列決定作業を経て、英国バイオバンクは世界最大の独立した配列データセットを公開し、この種のプロジェクトとしては最も野心的なプロジェクトを完了した。
現在までに、90か国以上から3万人を超える研究者が英国バイオバンクの利用登録を行い、その結果、9,000件を超える査読付き論文が発表されている。
■ 医療研究のための画期的なデータ
今回の配列決定データの追加は、英国バイオバンクの膨大な生物医学データベースを使用してなされた一連の大きな進歩に続くものである。この飛躍的発展には次のようなものがある。
・新薬の開発につながる、肥満やⅡ型糖尿病の防止に関連する遺伝子の発見
・心臓病、乳がん、前立腺がんなどの遺伝的リスクの高い個人特定し、スクリーニングを行う技術
・スマートウォッチのデータから、最長で発症の7年前にパーキンソン病を予測し、早期介入を行う技術■ 既存データの可能性を高める
新たな配列データは、既存のデータの可能性を劇的に高める。この規模の全ゲノム配列データを英国バイオバンクの既存のデータおよび生物学的サンプルと組み合わせることで、次のような生物医学的イノベーションがもたらされることになる。
・ターゲットを絞った創薬と開発
・疾患の原因となる何千もの非コード遺伝子変異の発見
・精密医療の促進
・疾患の生物学的基礎の理解■ このプロジェクトを支えるコンソーシアム
このプロジェクトは、Wellcome財団、UKRI、バイオ医薬品会社4社(Amgen、AstraZeneca、GSK、Johnson & Johnson)から資金提供を受けている。英国バイオバンクは多額の投資の対価として、コンソーシアムの業界メンバーに9か月間の独占的データアクセスを提供している。
[DW編集局]