（2024年1月9日付、欧州委員会の標記発表の概要は以下のとおり）

欧州委員会はこのほど、仮想世界と生成人工知能（AI）での競争に関して提案を求める2件の公募を開始し、大手デジタル企業数社に情報提供の要請を行った。

関心のある関係者は、経験を共有し、仮想世界と生成AIにおける競争のレベル、そして競争法がこれらの新市場の競争の確保にどのように役立つか、についての知見を提供することが求められている。欧州委員会は、公募を通じて受け取ったすべての意見を慎重に検討する。その検討に続いて、欧州委員会は2024年の第2四半期にワークショップを開催し、提案から得られるすべての異なる視点を集約し、この検討をさらに深める予定である。

さらに、欧州委員会は、デジタル市場の大手企業と生成AI開発・提供企業との間で締結された協定の一部について、これらの提携が市場力学に及ぼす影響を調査している。

最後に、欧州委員会はMicrosoftのOpenAIへの投資がEU合併規制（EU Merger Regulation）の審査対象となるかどうかを確認している。

（背景）

生成AIシステムと仮想世界は、大きな可能性を秘めた破壊的技術である。

競争規則の施行に加えて、EUはすでにこれらの新技術によってもたらされる課題に積極的に取り組んでいる。2023年7月には、「Web 4.0と仮想世界に関する通達（Communication on Web 4.0 and virtual worlds）」が発表され、2023年12月には欧州議会と理事会が欧州委員会のAI法提案について政治的合意に達した。人工知能に関する史上初の包括的な枠組みは、イノベーションを促進しつつ、AIが安全であり、基本的権利を尊重することを確実にするものである。

仮想世界とは、3Dや拡張現実（XR）などの技術に基づく永続的で没入型の環境であり、設計、シミュレーション、コラボレーション、学習、社交、取引、娯楽の提供などのさまざまな目的で、物理世界とデジタル世界をリアルタイムで融合させることができる。

生成AIシステムとは、ユーザのプロンプトに応じて、幅広い用途に使用できる合成音声、画像、動画、テキストなどを生成するAIシステムであり、さまざまな分野のさまざまなタスクに応用できる。

EUにおけるAIへのベンチャーキャピタル投資は、2023年に72億ユーロ以上と推定されている。欧州の仮想世界の市場規模は、2023年には110億ユーロ以上に達すると推定されている。どちらの技術も今後数年間で急激に成長すると予想されており、企業の競争のあり方に大きな影響を与える可能性がある。

[DW編集局]