[本文]

国・地域名:
ドイツ
元記事の言語:
ドイツ語
公開機関:
マックスプランク協会(MPG)
元記事公開日:
2024/01/16
抄訳記事公開日:
2024/02/26

マイクロプラスチックはどのようにして南極までたどり着くのか

Wie Mikroplastik in die Antarktis gelangt

本文:

(2024年1月16日付、マックスプランク協会(MPG)の標記発表の概要は以下のとおり)

マイクロプラスチックが大気中をどこまで移動するかは、粒子形状に大きく依存する。ウイーン大学とゲッティンゲンのMPG動力学・自己組織化(DS)研究所のチームは、球状の粒子は急激に降下する一方、マイクロプラスチックの繊維は長距離を移動し、北極や南極、成層圏にまで達する可能性があるとしている。マイクロプラスチックの気候やオゾン層への影響については、今後の研究を待たねばならない。

ウイーン大学気象物理学研究所のタツィイ(Daria Tatsii)氏は、次のように述べた:「大気移動モデルでも、そうした繊維状のマイクロプラスチックは、空気中の滞留時間が、従来の予想よりもはるかに長くなければ、長距離の移動は不可能と考えられていた」

■空気中のマイクロプラスチックの動態

チームは、室内実験とシミュレーションにより、マイクロプラスチックがどのように空気中を移動するかを調査した。研究者らはまず、マイクロプラスチック繊維の大気中の降下速度を実験的に算出した。MPG DS研究所のバゲリ(Mohsen Bagheri)氏は、「驚くべきことに、これまで空気中のマイクロプラスチック繊維の動態に関する研究はほとんどなかった。しかし、サブミクロン解像度の3Dプリンティング技術の進歩と、空気中の個々のマイクロプラスチック粒子を追跡できる新たな装置の開発により、この知識のギャップを埋めることができた」と述べた。

研究者らは次に、繊維状粒子の降下過程を記述するモデルを、全地球的大気輸送モデルに統合した。その結果、長さ1.5mm以下の繊維状粒子がモデル内の地球上で最も遠くまで到達したのに対し、同じ質量の球状粒子は、プラスチック排出源の近くに降下した。

タツィイ氏は、次のように述べた:「この新たな研究室での実験とモデル分析により、繊維状粒子の大気移動に関する不確実性を大幅に減らし、マイクロプラスチックが非常に遠くまで到達する理由を最終的に説明することができた」

■マイクロファイバーの気候やオゾン層に対する影響

ウイーン大学のシュトール(Andreas Stohl)気象地球物理学研究所長は、「本研究では、プラスチック繊維が大気中でこれまで考えられていたよりも、はるかに高い高度に達する可能性が示されており、雲の形成過程や成層圏のオゾンに影響を与えることも考えられる。マイクロプラスチック繊維が、対流圏上層に大量に存在し、成層圏にまで到達している可能性は十分にあり、これらの粒子に含まれる塩素がオゾン層を破壊している可能性も否定できない」と述べ、次のように付け加えた:「現在では、基本的なデータがまだ不足しているものの、世界のプラスチック生産量が劇的に増加していることを考えると、警戒を怠ることはできない」

[DW編集局]