[本文]

国・地域名:
米国
元記事の言語:
英語
公開機関:
国家科学技術会議(NSTC)
元記事公開日:
2023/12/14
抄訳記事公開日:
2024/03/12

費用便益分析の最前線: 連邦政府の優先事項と今後の研究の方向性

Advancing the Frontiers of Benefit Cost Analysis: Federal Priorities and Directions for Future Research

本文:

(2023年12月14日付、国家科学技術会議(NSTC)の標記発表の概要は以下のとおり)

大統領府の要請に基づき、NSTCは標記をタイトルとする報告書を作成した。連邦政府のエビデンスに基づく意思決定の基本的な前提は、ある決定がもたらす公共の便益が、その費用を正当化すべきということであり、連邦政府の省庁は、その政策、プログラムなどについて、この前提を検証するためにさまざまな分析を行っている。バイデン大統領は就任直後に省庁に対してこうした分析手法の現代化を指示する覚書を発表し、その中では①省庁は自らの行動の効果(effects)を十分説明すべきこと、②省庁による分析は最新の科学的・経済的な理解を反映すべきこと、を求めていた。本報告書は、政府機関が定量化や収益化が困難と考える共通の効果を特定し、それらの効果を科学的・経済的に理解する戦略を策定することにより、当該の覚書に直接応えるものである。

現行の費用便益分析に関する連邦ガイダンスは、適切な分析のための選択肢を提供しており、金銭化、定量化、影響予測の順で推奨している。本報告書は、このようなアプローチを認識し、機関の意思決定を支援するための分析手法を進化させる機会を追求しており、特に、国民の幸福に重大な影響を及ぼし、今後実施される多くの分析に関連し、かつ定量化や金銭化の可能性のある便益・費用に重点を置き、以下の5つの重要分野を特定するとともに、「分布分析」と「リスク解析」といった2つの分野横断的テーマについても検討を求めている。

① 非致死的な健康(肝疾患、低出生体重児、メンタルヘルス等)に関する効果
② 生態系サービス(レクリエーションや生活のための生態系利用、気候緩和等)に関する効果
③ 山火事と異常気象に関する効果
④ 情報と透明性(消費者情報、契約の透明性、公共リスク等)に関する効果
⑤ 公益のためのプログラムに関する効果

さらに、報告書は、省庁と広範な研究コミュニティが政府による分析を改善する方法に関し、省庁に対して、以下を提言している。

① データアクセス、共同研究、人材交流を通じた省庁間のリソース共有
② NSTCの費用便益分析小委員会への参加
③ 戦略計画とエビデンス構築計画(Learning Agendas)の活用による費用便益改善計画の策定と予算化
④ 各省庁の関連政策立案への一般市民の参加
⑤ 大統領行政府(大統領府情報規制局や行政管理予算局等)への支援要請

また、学界、非営利団体、地域社会、企業を含む広範な研究コミュニティに対して、以下を提言している。

① 再現性と便益移転、また広範な外部妥当性に関する研究への動機づけ
② 順応性、表明選好、応用一般均衡モデル等に関する追加的な研究の奨励
③ 本報告書の重要分野に関する資金提供と研究に対する優先化
④ 各省庁との早期の段階での連携
⑤ 政府での一時雇用を通じた知識共有に関する貢献の検討
⑥ 関連するテーマに関する利用可能な研究リソースの収集・統合
⑦ 行動変容実験の実施、データベースからデータを抽出するための大規模言語モデル技術の開発、他省庁での再利用を可能にする分布データの公表などによる、新たなデータ、ツール、方法論の開発

最後に報告書は、各省庁が分析を実施する上で、それぞれ特有の状況に直面しており、分析を改善する方法を決定する際には、各省庁の権限、リソース、その他の要因を考慮しなければならないと指摘している。さらに、連邦政府の指針に沿って、各省庁が取り組みを調整し、最新の学問的知見を活用し協働することを奨励している。

[DW編集局]