[本文]

国・地域名:
EU
元記事の言語:
英語
公開機関:
欧州委員会(EC)
元記事公開日:
2024/02/19
抄訳記事公開日:
2024/04/08

欧州の競争力と研究・イノベーション・教育の役割

European Competitiveness and the role of research, innovation and education

本文:

(2024年2月19日付、欧州委員会の標記発表の概要は以下のとおり)

2月19日、欧州委員会がベルリンで行った講演の記録である。その主な内容を抜粋要約して以下に記す。

競争力のある新技術やビジネスモデルを開発するには、イノベーション創出を強力に推進する必要がある。それは、米国のインフレ抑制法や「クリーン技術(clean tech)」の推進、そして重要原材料をめぐる競争が示すように、他国は技術競争において急速に進歩を遂げているからである。

EUの競争力は、革新力と生産性によって決まる。革新力と生産性は、研究・イノベーションへの投資、優れた教育、適切なスキルを備えた人材に依存する。これは、過去のデータ分析によって十分に裏付けられている。そして、十分な研究開発投資を行う能力においても、また国際的な競争で勝ち残るために必要なスキルを欧州の人材に提供する上でも、高等教育機関が重要な役割を果たすことは明らかである。

■ 研究・イノベーション(R&I)

現在、R&I投資実績は依然として期待外れである。世界の研究開発におけるEUのシェアは、20年前に比べて大幅に増加したものの、最近は停滞している。2022年、EUはGDPの2.23%を研究開発に支出したが、前年の2.27%から減少しており、目標の3%には程遠い。

競合国の投資実績はEUを上回っている。2022年、米国は3.5%、日本は3.3%、中国(香港を除く)は2.4%、韓国は4.5%を記録した。

2023年の成長率においても、EUは0.5%で、米国の2.5%、日本の1.9%に比して低調であった。2024年の見通しも芳しくない。さらに重要なことは、過去20年間のほとんどにおいて、米国がEUを成長率で上回っていることである。

したがって、EUは研究開発投資を強化する必要がある。これは特に、実用化と規模拡大を促進する民間のR&I投資に言えることである。

欧州のR&I政策は、このニーズに対処する上で重要な役割を果たしている。しかし、より適切な総合的な枠組み条件と構造改革も必要である。

EUの研究開発枠組みプログラムであるHorizon Europeは、7年間、約1,000億ユーロの予算を持ち、この種のものとしては世界最大規模である。本プログラムは、卓越性に基づくもので、世界中からの参加に開かれており、以下の3つの柱で支援を提供している。

・欧州研究会議(ERC)を通じての基礎研究
・アカデミアと産業界とのパートナーシップを通じた社会的課題の解決策の研究
・欧州イノベーション会議(EIC)を通じた、市場化が近い画期的な技術を開発する革新的な企業への支援

■ 教育

教育も競争力の大きな原動力であり、生産性の向上と労働市場への参加の鍵である。高齢化社会においてはその両方が強く求められている。

教育は加盟国・地域の権限であるが、欧州レベルでは、「エラスムス+(Erasmus+)」が、学習のモビリティに強力な支援を提供している。最新の年次報告書によれば、40億ユーロを超える資金により、約26,000件のプロジェクト、73,000の機関、120万人の学習者・教師・指導者・若者に機会を提供している。

学生や研究者が高等教育や研究でのキャリアにおいて活躍し、個人的・職業的な展望を持つことができるよう、適切な環境を整える必要がある。「欧州大学戦略(European Strategy for Universities)」を通じて、そうした環境整備を行っている。それは、「現在の課題は国や分野の枠を超えている」という単純な原則に基づいている。高等教育機関も同様に、境界を超えて協力する必要がある。そのような取り組みの代表例が、「欧州大学(European Universities)」イニシアチブである。

こうした取り組みは、共同プログラムやモビリティを促進する。このボトムアップ・アプローチにより、すでに50の欧州大学連合が設立され、近いうちに500の大学が参加する60の大学連合の設立が期待されている。これらの大学連合には、4年間で最大1,440万ユーロが提供される。

[DW編集局]