（2024年3月7日付、科学・イノベーション・技術省（DSIT）の標記発表の概要は以下のとおり）

今回の予算では、英国の科学技術セクターを強化し、成長を促進し、雇用を創出し、生活を改善するために、イノベーションを解き放つことを目的とした野心的なパッケージが発表された。

春季予算で発表されたDSIT関連の政策には次のようなものがある。

◼ 医学研究

・ライフサイエンス製造業への投資
英国のライフサイエンス・セクターへの9,200万ポンド相当の新規投資は、雇用を支援し経済を成長させながら、保健衛生のレジリエンスを高め、イノベーションを促進する。

ウェールズのペンコイドにあるOrtho Clinical diagnostics社と、北アイルランドに拠点を置く製薬会社Almac社は、英国の拠点にすでに8,400万ポンドを投資しており、政府からさらに750万ポンドの支援を受ける。

これらは、Almac社によるがん、心臓病、うつ病などの治療薬の開発およびOrtho Clinical社によるさまざまな病気や状態を特定するために使用される製品試験施設の拡張に投資される。

・医学研究キャリアの資金支援
英国が長期にわたって科学超大国であることを確保するために、Cancer Research UK、Epilepsy Research UK、Medical Research Scotlandなどの慈善団体は、次世代の医学研究者のキャリア立ち上げのために4,500万ポンドの支援を受ける。
支援は「医学研究チャリティ早期キャリア研究者基金」を通じて提供される。これまでにすでに1,600人の研究者を支援しているこの資金支援は、世界規模で最大の医療問題に取り組む新たな人材の供給源を育成する。

◼ 人工知能

・アラン・チューリング研究所へのファンディング増強
財務大臣は、データ・サイエンスAIの国際的主導機関であるアラン・チューリング研究所（ATI）への投資を2倍にし、ファンディング総額を1億ポンドに増やす旨発表した。 5年間で5,000万ポンドを投じる野心的な新たなパッケージは、防衛・安全保障に加えて、医療、環境、持続可能性などの領域における国内外の課題への対処を支援するATIのこれまでの取り組みに基づいている。
英国のAIエコシステムに対するこの大幅な強化により、今後何年にもわたって価値が向上し、トレーニングの提供と併せて、各組織にスキル、オープンアクセス・インフラ、R&Iリソースを提供する当研究所の能力が向上する。

・AI安全研究所
今回の予算では、最先端のAIシステムをテストするという目標の達成に関して、AI安全研究所（AISI）の進捗状況も更新され、英国と世界がフロンティアAIモデルのインパクトに確実に備えることができるようになる。

・AIスキルアップ基金の発足
民間セクター全体でAIの導入を促進するために今年1月にAI機会フォーラムが発足したことに続き、今回の予算では新たに740万ポンドの柔軟なAIビジネス・スキルアップ基金も立ち上がった。このパイロット事業は、中小企業がAIによってもたらされる機会を切り開き、将来のAIスキルを育成し、経済全体の成長を促進するのに役立つ。

・AI研究リソース
また、AI開発に不可欠な英国の最先端の公共AIコンピューティング施設へのアクセスを政府がどのように管理するかを定めた計画を今年後半に発表する意向も発表された。このようなリソースは、研究者や革新的な企業に、世界中の最先端の研究や最先端のAI製品の開発にAIを使用するために必要なコンピューティング能力を提供する。

◼ データ

・公共部門の新規データ・パイロット事業
350万ポンド相当の新規データ・パイロット事業2件に対するDSITのファンディングは、成人の社会福祉・教育部門のスタッフや研究者を支援するために、一貫性があり安全にアクセス可能なデータ資産の構築に役立つ。
このファンディングは、革新的で高品質な教育AIツールを目的とした教育省のイニシアチブを支援するほか、成人の社会福祉におけるデータ・アクセスを向上させる保健・社会福祉省のプロジェクトを拡張させる。

・データ研究クラウドの詳細確認
データの研究・イノベーションの可能性を解き放つ、529万ポンド相当の4件のデータ研究クラウド・プロジェクトの詳細も明らかにされた。このパイロット事業により、研究者は最高品質のデータにアクセスできるようになり、世界をリードする研究拠点としての英国の地位を確固たるものにする。

◼ 宇宙

・C-LEOの開始
1億6,000万ポンドの地球低軌道接続（C-LEO）プログラムの全容もこのほど発表された。秋季財政報告で発表された最初の1,500万ポンドのC-LEO要求に基づいた4年間のプログラムは、英国が数多くの高度なスキルを持った雇用を創出しながら、次世代衛星通信技術の世界的リーダーになることを保証するものである。この最先端の技術は、経済を成長させながら、アクセスが困難な地域にコネクティビティをもたらし、英国全土のデジタル格差を埋めるために不可欠である。

・サクサボード（SaxaVord）宇宙基地への投資
政府は、シェトランド諸島にある英国初の認可宇宙基地であるサクサボード宇宙基地のために1,000万ポンドを用意した。これは、英国が、2030年までに衛星を軌道に打ち上げる初めての欧州の国になり、小型衛星の主要な打ち上げ先となるという国家宇宙戦略で定められた目標の達成に貢献するものである。

◼ 量子

成長対策パッケージの一環として、英国の量子コンピューティング・ミッションの実現を進めるための量子誤り訂正プログラムに160万ポンドを投じることが発表された。このプログラムは、ハードウェアにおける不要な乱れをする方法を把握することで、量子コンピューティングにおける英国の世界的な主導的地位を強化する。

[DW編集局]