[本文]

国・地域名:
フランス
元記事の言語:
フランス語
公開機関:
高等教育・研究省(MESR)
元記事公開日:
2024/03/25
抄訳記事公開日:
2024/05/17

「PEPR AI」開始 フランスを研究の最先端へ

PEPR intelligence artificielle : la recherche française à la pointe

本文:

(2024年3月25日付、高等教育・研究省(MESR)の標記発表の概要は以下のとおり)

政府は3月25日、国の優先研究プログラム(PEPR)の一つに採択されている人工知能(AI)領域のプログラム「PEPR AI」(ペーウーペーエル・エーアイ)を開始した。5か年投融資計画「フランス2030」の一環で、フランスをAI研究で世界の最先端に立たせることを目指している。

PEPR AIは、2018年に開始されたAIの国家戦略の一環で、AIの開発と使用における革新的技術を生み出す目的を持つ。またAIの科学的課題の核心ともいえる持続可能性、生態学的移行および技術主権という社会的課題にも対応している。

研究は原子力・代替エネルギー庁(CEA)、国立科学研究センター(CNRS)、国立情報科学・自動化研究所(INRIA)が行うとともに、国立研究機構(ANR)が管理・運営を担当。資金は「フランス2030」の枠組みから提供されている。

ジャン・ザイ(Jean Zay)氏によるフランスの研究成果であるスパコン1台を活用し、AI学際研究4機関(「トロアジーアー」または「AIクラスター」)において、優秀な人材に向けた190のポスト(「トロアジーアー」以外からの43を含む)が用意される。

PEPR AIの目的は、以下のとおりである。

▽節約型AI(エネルギー効率とデータ効率)、組み込み型AI、分散型AI、信頼性の高いAI(堅牢性、公平性、透明性、セキュリティの観点から)の科学的障壁を取り除く。
▽フランスにおける数学教育の卓越性を生かし、AIの数学的基盤に新たな地平を切り開く。
▽世界中からAI研究の優秀な人材を惹きつける。
▽フランスの産業界、特にスタートアップ企業がAI導入に関わる道を開く。

このため5か年投融資計画「フランス2030」により6年間で7,300万ユーロを確保し、4〜5年にわたり50のフランスの研究チームを動員することとしている。

このプログラムは現在、以下の3つのテーマを軸とし、目標の高いプロジェクト9件を支援している。

▽エネルギー消費等を抑えつつ効率を高める節約型AIおよびロボット等の電子機器と統合した埋め込み型AI
▽利用者等から信頼されるAIおよび複雑な学習等の問題を解決できる分散型AI
▽数学の様々な新しい分野を開拓するAIの数学的基盤

PEPR AIのディレクターは、パリ大学ドーフィン校のジャマール・アティフ名誉教授、マルク・シェノエINRIA上級研究員、フランソワ・テリエCEAのAI担当シニアフェロー
である。

2022年初頭に、PEPR AIの3つの主要な軸に関連するプロジェクトを決めるため提案募集が開始された。様々な意見を聞くため、フランシス・バッハINRIA上級研究員、ガブリエル・ペイレCNRS上級研究員等によって構成されるAI専門委員会が設けられた。

欧州委員会(EC)とPEPR AIは、特にAIシステムの信頼性(堅牢性とセキュリティ、プライバシー保護とデータガバナンス、環境への影響、透明性と説明可能性)や組み込み型AIの分野において目的を共有している。PEPRのリーダーは、ECのパートナーである「AI・データ・ロボティクス・コンバージェンス・アクション(ADRA)」、「信頼できるAIの卓越したネットワーク(TAILOR)」を通じてAIロードマップの策定でECを支援する行動に参加し指導的な役割を果たしている。さらに、PEPR AIの研究者も数名、欧州レベルのプロジェクトに携わっており、 PEPR AIは、欧州のAI研究開発が活性化していくその中心に自らを位置づけ、ECが開始した研究プログラムを補完することを望んでいる。

[DW編集局]